日本経団連タイムス No.2882 (2007年11月1日)

ABAC/APEC2007活動報告会開く

−ABACを通じた政策提言プロセスへの主体的参画を呼び掛け


APECビジネス諮問委員会(APEC Business Advisory Council、以下ABAC)は10月18日、ABAC委員、APEC高級実務者、ABAC日本支援協議会の会員企業を中心に、約100名の参加者を経団連会館に迎え、ABAC/APEC2007活動報告会を開催した。

今年のABAC活動は豪州が議長国となり、米シアトル・東京・豪シドニーでの計3回のABAC会議でAPEC首脳への提言等を取りまとめ、第3回ABAC会議を実施した9月の豪シドニーで、APEC首脳会議と同日にABAC委員とAPEC首脳との対話を行い、幕を閉じた。今年のAPEC首脳へのABAC提言は、簡潔に英文3ページにまとめられ、議長国である豪州のリーダーシップにより最重要課題に位置付けられた「気候変動とエネルギー安全保障」をはじめ、WTOドーハ・ラウンドの難航を背景とした「APEC域内の経済統合に向けたさらなる取り組み」への期待等が表明された。

活動報告会の冒頭では、上島重二ABAC日本支援協議会会長(三井物産顧問)から、5月末に東京で成功裏に開催された第2回ABAC会議への会員企業ならびに関係企業・団体からの格別の支援と協力に対し謝辞が述べられ、日本がABAC/APECの議長国となる2010年に向けて、引き続きの支援と政策提言面におけるABACを通じてのAPECプロセスへの主体的参画を呼び掛けた。

その後、日本のAPEC高級実務者である経済産業省の佐々木伸彦通商交渉官と外務省の水上正史審議官から、APEC日本が注力し主導した成果として、投資環境整備関連での官民対話による投資円滑化行動計画の08年策定決定や、知的財産権関連での域内における特許審査結果の相互利用等についての進展、APEC改革の一環として調査分析・政策提言・評価・協力を行うポリシー・サポート・ユニットのAPEC事務局内設置等について報告があった。

ABAC日本委員からの報告では、貿易・投資の円滑化作業部会の副部会長である石坂芳男委員(トヨタ自動車相談役)から、今年の重点課題として取り組んだ「原産地規則の改善強化」「投資環境整備の推進」「円滑な物流と安全確保の両立」「APECビジネストラベルカード」「APECとABACの連携強化」についての活動成果と評価が報告された。技術・情報作業部会の部会長である少徳敬雄委員(松下電器産業客員)からは、ABAC/APECを通じて今年の最重要議題となった「エネルギー安全保障と気候変動」のほか、「知的財産権の保護」「情報通信技術(ICT)による経済成長」「ライフサイエンス」に関する取り組み報告があった。また、8月末から神崎泰雄委員(日興シティ・グループ特別顧問)の後を受けて金融・経済作業部会の副部会長となった渡辺喜宏委員(三菱UFJフィナンシャル・グループ専務取締役)からは、APEC域内における富の創出と金融市場の安定化をめざした「資本市場の深化・強化」と「社会保障と年金制度」に関する報告があり、ブッシュ米大統領らと同じテーブルで、APEC首脳との対話にはじめて参加しての感想などが述べられた。最後に、再び石坂委員から、ペルーが議長国となる来年のテーマ、『Mind the Gap = making globalization an opportunity for all』が紹介された後、米企業によるABAC/APECへの主体的な取り組み状況が紹介され、日本においても政策提言面における関係企業の積極的な参画を求めた。

これを受けて質疑応答・意見交換では、知的財産権保護の観点から、今年9月のABAC主催模倣品・海賊版対策事例紹介/政策提言フォーラムの参加者から感想が述べられたほか、円滑な物流と貿易セキュリティーの観点から、今年6月のAPEC主催STAR−V会合参加者から静脈による生態認証の有効性とさらなる活用について発言があるなど、有意義な活動報告会となった。

なお、2日には関西経済連合会・大阪商工会議所の協力を得て、大阪でも同様の報告会を開催する予定である。

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