日本経団連タイムス No.2884-02

日本経団連と経済広報センター（御手洗冨士夫会長）は７日、中部経済連合会（中経連、川口文夫会長）・中日新聞社との共催によりシンポジウム「道州制で日本を変える」を名古屋で開催した。日本経団連は今年３月に発表した「道州制の導入に向けた第１次提言」 <PDF> において、道州制導入に向けた国民的な気運を高める活動を各地で展開していくことを表明しており、同シンポジウムは９月に東京で開催した第１回に続く２回目。東京以外の地域では初めて開催したものである。シンポジウムではまず、川口中経連会長と御手洗会長が主催者を代表してあいさつし、自由民主党道州制推進本部本部長代行の杉浦正健衆議院議員のあいさつに続いてパネルディスカッションが行われた。当日は、日本経団連、中経連の会員や、経済広報センターの社会広聴会員、一般参加者、地方自治体関係者など４００名以上が参加した。

■ 川口中経連会長、御手洗会長主催者あいさつ

川口中経連会長は、地方部の人口減少を例に挙げて、その大きな要因の一つが東京一極集中をもたらした中央集権的な日本のあり方にあると説明、その中央集権体制が今や制度疲労を起こしていると指摘した。その上で、今後も日本が発展するためには地方分権型社会の確立が不可欠であり、中経連としては道州制こそが地方分権の究極の姿であると主張していると述べた。

続いて御手洗会長は、道州制の意義や目的などについて言及し、道州制は地方分権改革や国・地方を通じた行財政改革を含む「究極の構造改革」を実現するものであり、道州制の下で日本は個性ある広域経済圏を形成して発展することができるという日本経団連の基本的な考えを紹介した。また、中部地方では自動車や二輪車などの「ものづくり」を中心とした広域経済圏が既に形成されており、権限や税財源の移譲を通じて地域の自立性が高まれば、道州として十分に自立できるとの期待を示した。

■ 杉浦議員あいさつ、パネルディスカッション

次に、杉浦議員があいさつし、自民党では２日に道州制調査会が総裁直属の道州制推進本部に格上げされることが決まったと紹介。中央集権国家から地方分権型国家に変わらなければ、日本はグローバル競争に勝ち抜けなくなるとの危機感を示した上で、政治主導によりわが国で連邦制に近い道州制を導入し、司法以外の権限のほとんどを国から道州・基礎自治体に移譲して地域が自立してやっていけるようにすべきだとの持論を述べた。

続いて行われたパネルディスカッションでは、冒頭、コーディネーターの昇秀樹・名城大学都市情報学部教授が、少子・高齢化が進む中で日本の成長を持続可能なものにするために最も必要な改革が道州制であると述べた。続いて、杉浦議員は、市町村合併を進めることで基礎自治体をさらに強化し、これが基本的な住民サービスを担うこと、そして道州はこれを補うべきこと、さらに、地方に権限を移譲した国では中央省庁の再編まで行うような道州制が必要であるとの見解を示した。

地方の立場からは、神田真秋・愛知県知事が、道州制導入の是非に対する知事の意見が一致しないのは、三位一体改革により結果的に地方が疲弊したことの繰り返しになる懸念があるためではないかとの考えを示した上で、グローバル競争の時代にあっては県より大きな枠組みが必要であり、道州制を導入すべきと強調した。篠﨑由紀子・都市生活研究所社長は、関西では地方分権体制の確立に向けて域内の各府県や経済界などが「関西広域機構」を設立し、防災、観光、交通などの分野で共同実施や調整を行い、「関西広域連合」の実現をめざしていると、関西における取り組み事例を紹介した。

経済界の立場からは、前田晃伸・日本経団連副会長・行政改革推進委員長が、各道州は会社経営のように地域経営を実践すべきであり、それによって住民がメリットを感じられるようにすべきとした上で、３月の日本経団連の提言のポイントを説明した。また、佐々和夫・中経連副会長は、産業振興について、今後は国が主導するのではなく地方が自ら取り組むべきと発言した。

日本経団連では、今回の議論も踏まえつつ、道州制の導入に向けてさらに検討を進めるとともに、来年２月には大分で同様のシンポジウムを開催するなど、全国各地で道州制に対する国民の理解を深める活動を展開する予定である。

道州制シンポジウムを名古屋で開催

－導入後の日本の姿で議論

■ 川口中経連会長、御手洗会長主催者あいさつ

■ 杉浦議員あいさつ、パネルディスカッション