日本経団連タイムス No.2885 (2007年12月3日)

財務省首脳との意見交換会を開催

−財政・税制・社会保障など今後の財政運営をめぐり


日本経団連は11月15日、都内のホテルで額賀福志郎財務大臣はじめ、財務省首脳との意見交換会を開催した。財務省からは額賀大臣、森山裕副大臣、宮下一郎大臣政務官、小泉昭男大臣政務官らが、日本経団連からは御手洗冨士夫会長、西室泰三評議員会議長、氏家純一副会長らが出席。今後の財政運営のあり方などをめぐり、意見を交換した。

会合の冒頭、御手洗会長は、グローバル競争が激化し、人口減少と少子・高齢化が進行する中で、わが国としては、経済の活力の維持、生活の安心・安全の確立が大きな課題であると指摘。財務省には、「経済活力を強化しつつ、社会保障を中心とするセーフティネットの持続性確保と財政の建て直しを図っていくためにも、歳出・歳入両面にわたる改革の道筋を明確に示していただきたい」と述べた。

続いてあいさつした額賀大臣は、わが国経済の現状について、構造改革の取り組みにより、息の長い景気回復を続けているとの見方を示すとともに、いずれは都市部も高齢化が進むため、地域経済の活性化を日本全体の問題として考えるべきと説明した。また、財政再建を進める上では、経済成長との両立が重要であることを強調した上で、来年度予算編成については、「歳出全般にわたって改革努力を行った上で、地域活性化、生活の安全・安心などに資するよう、メリハリの効いた予算編成に取り組む」との決意を示した。

具体的な論点をめぐっては、日本経団連側から、まず財政について、財政健全化に向けた中長期的な数値目標やルール設定、社会保障を中心とするセーフティネットの持続性確立の必要性を指摘。さらに、「道州制の導入を見据えつつ、国と地方の間における税・財政関係を、地域における受益と負担の関係を明確にする方向で再設計していくことが重要」と説明した。

続いて税制について、抜本改革の必要性を強調するとともに、「基礎年金の国庫負担割合の引き上げや、増大する社会保障費用の安定的な財源を確保する観点から、消費税の拡張は不可避であり、税制抜本改革の最大の課題である」と述べた。その上で、来年度改正の課題として、研究開発促進税制の控除限度額の引き上げ、上場株式等の譲渡益・配当に係る軽減税率の延長を挙げた。

さらに、社会保障については、国民が安心を得られるよう、社会保障制度の将来像を提示すべきことを指摘するとともに、来年度予算編成に関して、「政管健保に対する国庫負担を削減し、その削減分を健保組合・共済組合に負担転嫁するとの案は、財源の安易な付け回しであり、医療給付費の重点化・適正化など、本質的な対応を優先すべき」「診療報酬改定については、財政の健全性と国民の安心感の確保の両立を重視すべき」と述べた。

これらの意見を受けて財務省側は、まず財政に関して、新たな財政健全化目標の設定、国と地方の間における税・財政関係の再設計の必要性については、「問題意識として共通している」と応じた。

税制については、「2009年度の基礎年金の国庫負担割合の引き上げと、2011年度のプライマリーバランス均衡を念頭に、消費税を含む抜本的な税制改革を実現させるべく、本格的な議論を進める必要性を認識している」と述べた。また、研究開発促進税制や証券税制については、「厳しい財政事情の中、政策減税としてどのようなインセンティブを重視すべきか、総合的に判断したい」と応えた。

社会保障については、来年度予算編成のシーリングで、自然増分7500億円のうち、制度・施策の見直しにより2200億円の圧縮が決まるなど、厳しい歳出削減が求められる中、「いかに医療のトータルコストを削減するか、厚生労働省とも協議をしながら進めたい」と説明した。

【経済第一本部経済政策担当】
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