日本経団連タイムス No.2886 (2007年12月13日)

税制シンポジウムを開催

−今後のわが国税制のあり方議論


日本経団連・21世紀政策研究所経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は11月27日、シンポジウム「今後のわが国税制のあり方〜国際的な税制改革の潮流〜」を東京・大手町の経団連会館で開催した。日本経団連は、今年9月、税制抜本改革に関する提言を発表し、抜本改革の実現に向けた積極的な働き掛けを行っている。シンポジウムでは、御手洗会長の主催者代表あいさつの後、自由民主党税制調査会会長の津島雄二衆議院議員が基調講演を行った。その後、中央大学法科大学院の森信茂樹教授の報告に続いて、パネルディスカッションが行われた。当日は、日本経団連の会員や経済広報センターの社会公聴会員、報道関係者ら約250名が参加し、日本の税制改革を最前線で担う講師の説明に熱心に耳を傾けた。

■ 御手洗会長あいさつ

主催者あいさつで御手洗会長は、日本が、少子・高齢化、人口減少社会とグローバル化社会の中で、安定的な成長を持続し、先進諸国の中で最悪の財政状況の健全化を図るためには、税・財政一体の改革が待ったなしの状況であると指摘。税制抜本改革の実現のためには、納税者たる国民一人ひとりの理解が不可欠であり、本シンポジウムがその一助となることを期待すると述べた。また、平成20年度税制改正では、研究開発促進税制の拡充をはじめとする、日本の成長に資する税制措置が必要であることを強調した。

■ 津島議員基調講演

基調講演の中で津島議員は、「成長戦略の堅持と日本経済の競争力強化は国の政策運営の基本だが、上げ潮戦略のみによる財政再建は楽観的過ぎる」と述べるとともに、歳出削減を税制改革に先行して行うべきとする議論があることについて、「日本の一般政府総支出対国内総生産比は先進諸外国と比べて低い水準にあり、歳出削減できる余地は多くはない。税制抜本改革を行う際は、国民の合意を形成することが重要である」との考えを示した。

また、来年度税制改正の課題として、地域間の財政力格差の問題は待ったなしの状況であり、今年中に結論を出すこと、上場株式等の配当・譲渡益の軽減税率は単純延長せずに金融所得課税一体化への着地点を図ることが必要であると語った。

■ 森信教授報告、パネルディスカッション

森信教授は、「先進各国の税制改革の潮流」を議題に報告を行い、税制改革の国際的潮流として、(1)公平から効率(2)税と社会保障の一体化――の2点がみられると述べた。その上で前者については、ドイツの税制改革を例に出し、所得課税の税率を引き下げて、二元的所得税・金融所得課税一体化を図り、消費課税中心の税体系に軸足を移していると説明した。また後者については、所得再分配機能の再構築の観点から、米英では、社会保障給付と税額控除をセットにした給付付税額控除が採り入れられていると報告した。

続くパネルディスカッションでは、森信教授がモデレーターを務め、パネリストとして、田近栄治・一橋大学大学院教授、井堀利宏・東京大学大学院教授、大橋光夫・日本経団連税制委員会共同委員長が参加、(1)効率的な税制(2)税と社会保障の一体的な設計(3)国と地方との関係をめぐる税制のあり方――の三つをテーマに、活発な議論を展開した。

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日本経団連では、今回の議論を踏まえて、引き続き、税制抜本改革の実現、「希望の国、日本」の実現に向けた活動を展開する考えである。

【経済第二本部税制・会計担当】
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