日本経団連タイムス No.2887 (2008年1月1日)

「成長創造 躍動の10年へ」

−持続的成長への提言発表


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は1月1日、経済の持続的成長を通じて豊かな国民生活を実現するための考え方を発表した。同提言に基づき、2008年を日本経済の「躍動の10年」に向けたスタートの年とするために、全力をあげて取り組んでいく。提言の全文は次のとおり。

成長創造
〜躍動の10年へ〜

2008年1月1日
(社)日本経済団体連合会

われわれは、本2008年を、日本経済の次なる「躍動の10年」に向けたスタートをきる年にしたい。

いま、わが国の行く手には、少子高齢化と人口減少の同時進行、新興経済国の発展・追い上げ、地球温暖化問題の重要性の高まりなど、課題が山積している。
足もとでは、サブプライムローン問題を端緒とする国際信用不安の発生と米国経済の減速懸念、原油をはじめとする原材料価格の高騰などにより世界経済の動向が懸念されている。また、いわゆるねじれ国会に象徴されるように国内の政治動向にも不透明感が生じている。
こうしたことから、国民の間に先行きへの閉塞感が広がっている。

しかし、悲観からは何も生まれない。今まさに必要なことは、国民一人ひとりが豊かな生活を享受できる「希望の国」の実現に向けて、国全体で共有できる明確な目標を設定し、現状の閉塞感を打ち破り、躍動する日本経済を築いていくことである。

1.目標:10年以内に世界最高の所得水準を達成

豊かな国民生活は確固たる経済成長を通じてもたらされる。しかし、わが国の経済規模は過去10年来伸びておらず、一人あたり国民所得の国際的な順位は大きく落ち込んでいる。
いま国民が感じている閉塞感は、成長が足踏みしていることによる面も大きく、いわゆる格差問題への対応も、全体の規模拡大がなければ限られたパイの奪い合いに陥りかねない。
今後10年以内に主要国中で最高水準の所得を実現することを目指し、あらゆる政策手段を結集すべきである。

2.政策手段:目標達成に向け5つの戦略を進める

改革なくして成長はありえない。世界をリードする高度な技術力や優れた人的資本など、わが国が持つ「強み」を最大限強化する改革を推進・継続することが基本である。そのことが、地域間格差など現状では日本経済の「弱み」と言われている諸問題の克服・解消にもつながる。
このような観点から、今後10年において、以下の重要政策課題に総力をあげて取り組むべきである。

(1)イノベーションを加速し成長力を強化する

(2)EPA・FTAの締結を通じ世界経済のダイナミズムを取り込む

(3)道州制を導入し日本全体の豊かさを向上させる

(4)事業環境の整備を進め企業の活力を高める

(5)公的部門の改革により国民の安心・安全を確保する

3.具体的プロジェクト:先行プロジェクトを改革推進の起爆剤とする

今後5年を目途に、諸改革を加速度的に進める上で波及効果を有する先行実施プロジェクトとして、次の3点を重点的に推進すべきである。

(1)世界最先端の電子政府・電子社会の構築

政府業務の電子化を梃子に電子社会を実現することにより、国民生活の利便性向上と国・地方を通じた行政の効率化・合理化、大企業から中小企業に至るIT化を加速し、社会全体の生産性を飛躍的に向上させる。

(2)低炭素社会確立に向けたイニシアチブの発揮

世界最高水準のエネルギー効率を実現しているわが国として、革新的な環境・エネルギー技術の開発・普及を強力に推進する。同時に、地球温暖化防止に向けた国際的取り組みをリードする。

(3)道州制につながる広域経済圏の形成

道州制の確実な導入に向けて、効率的な交通・産業インフラ整備、地方への権限移譲や地方財政の自主性向上などを通じ、全国に5つ以上の自立した広域経済圏を形成する。

以上

【経済第一本部経済政策担当】
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