日本経団連タイムス No.2887 (2008年1月1日)

岸田内閣府特命担当相と懇談

−知財戦略などで意見交換


日本経団連は12月12日、都内で岸田文雄内閣府特命担当大臣との懇談会を開催した。岸田大臣は、わが国最初の知財戦略担当の特命大臣であり、日本経団連の知財関係幹部との懇談は今回が初めてとなる。

会合の冒頭、あいさつに立った榊原定征日本経団連副会長は、「『知的財産立国』をめざした取り組みにより、わが国は先進的な知財制度を持つ国になった。今後は、わが国の経験を国際的に役立てていく必要があり、政府としても、世界特許システムの実現に向けた取り組みや模倣品・海賊版対策など、新しい国際秩序の形成に向けて積極的な活動を推進していただきたい」と述べた。

続いてあいさつを行った岸田大臣は、「わが国では、知財戦略を国家戦略の一つとして位置付け、政府、産業界によって多面的な取り組みを推進し、着実な成果を上げている。しかし、技術進歩のスピードは速く、市場構造も質的な変化を示している。わが国経済の国際競争力を維持し、持続的な成長を図るため、先般、分野別の知財戦略を取りまとめた。戦略では、知財政策の基本理念として、『技術』『市場』『制度』の三つのフロンティアの開拓を掲げている。政府と産業界が連携し、この『知財フロンティア』を広げ、知的創造サイクルをより大きく回転させていかなければならない」との基本的な考えを示した上で、特に、(1)環境技術に関する知財戦略への取り組み(2)国際標準化活動の強化(3)産学連携の推進――の3点について言及した。特に国際的な取り組みが必要とされている環境問題については、「わが国の環境技術をもっと世界に使ってもらい、環境問題の解決のために積極的に貢献していく必要がある」との認識を示し、産業界に対して、「国際貢献の観点を踏まえた知財戦略の取り組みについて検討してもらいたい」と提案した。その後、分野別知財戦略の内容について、素川富司知的財産戦略推進事務局長から紹介があった。

■意見交換

引き続いて行われた意見交換では、まず日本経団連側から発言があり、野間口有知的財産委員長から、「わが国の知財戦略への取り組みは08年で7年目となる。これまでの施策がどの程度イノベーションの促進に寄与したのか、ここで一度、総合的なレビューをしておく必要があるのではないか」との考えが示された。また、岸田大臣から提案のあった環境技術に関する知財戦略については、「企業競争力に影響がある場合や意図せざる技術の流出が起こってしまう場合を除いて、正当な対価が得られるのであれば、広くライセンスを行うことでわが国の技術を普及させ、世界の環境問題の解決に役立てるべきとの考えに賛同する」との見解を示した。

続いて、吉田信博国際標準化戦略部会長から、「産業界としても国際標準の重要性に対する認識をより一層深めていく必要がある。日本経団連では、『技術の国際標準化に関するアクションプラン』を策定し、啓発活動を推進している」との発言があった。

また、加藤幹之企画部会長からは、「オープンイノベーション時代においては、一つの企業だけで技術開発を進めることが難しくなっている。ネットワーク化の進展によって、技術者のコミュニティーや個人など、組織を超えてイノベーションが創出される動きもある。このような状況の中、大学にはさらなる知の発信が求められており、産業界としても連携に努めていきたい」との発言があった。

続いて、政府側から発言があり、素川事務局長は、「これまでの知財に関する施策のレビューについては、『知的財産推進計画2008』の策定に向けて、適切な評価のあり方を検討していきたい」と述べた。また、肥塚雅博特許庁長官からは、「世界特許システムの実現に向けては、(1)審査プロセスにおける情報交換(2)審査基準の調和(3)米国の特許法改正などを踏まえた実体的制度調和――の三つの方向から取り組みを進めたい」との発言があった。

最後に岸田大臣から、「本日の議論を通じて、知財戦略のあり方が経済活動に大きく影響することを実感した。また、環境技術に関する知財戦略のあり方について、わが国の環境技術を広くライセンスし、世界の環境問題の解決に貢献していくとの考えに、一定の条件の下で賛同いただいたことに意を強くした。政府としても、特許制度の国際調和や技術移転を促進するための施策の充実などに取り組んでいきたい」と述べ、引き続き産業界と連携して知財戦略を推進していくことを表明した。

【産業第二本部開発担当】
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