日本経団連タイムス No.2888 (2008年1月10日)

グリアOECD事務総長が来訪

−OECD諮問委員会と懇談


日本経団連OECD諮問委員会(本田敬吉委員長)は12月4日、東京・大手町の経団連会館にOECD(経済協力開発機構)のアンヘル・グリア事務総長を迎え、懇談会を開催した。グリア事務総長の日本経団連訪問は2006年7月の就任直後に続いて2度目。日本経団連からは西室泰三評議員会議長、米倉弘昌副会長、本田委員長、OECD経済産業諮問委員会(BIAC、本部=パリ)日本代表委員ほかが出席した。

グローバルな課題とOECDの役割

グリア事務総長は、翌週にインドネシアのバリ島で開かれる国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)などを例に引きながら、山積するグローバルな課題に言及。OECDとしても、それらの課題に関しグローバルな解決策を非加盟国とも協力しながら模索していく必要があると強調。その上で、07年5月のOECD閣僚理事会で決定した「加盟国の拡大」(チリ、エストニア、イスラエル、ロシア、スロヴェニアとの加盟交渉を同年12月に正式に開始)と「新興国との関係強化」(ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカ)に取り組んでいく決意を改めて表明した。また、G8ハイリゲンダム・サミットにおける合意に基づき、G8諸国がブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカとの間で四つのテーマ(投資、イノベーション、エネルギー効率、開発)についてハイレベルな対話を行うに当たって(ハイリゲンダム・プロセス)、OECDがその基盤を提供していることを紹介。今後、OECDとして、先進国と途上国との間のバランスを取りながら議論を進めていきたいとした。

その他のグリア事務総長の主な発言は次のとおり。なお、日本経団連側からは、OECD活動のスクラップ・アンド・ビルドやOECDを含めた国際機関の活動の重複排除の必要性が指摘された。

(1)気候変動

炭素税の導入、排出量取引制度の導入、技術革新へのインセンティブ付与といった対策のいずれを講じるにしても、証拠に基づいた解決( evidence-based solution )をめざす必要がある。また、日本が進めている Reduce、Reuse、Recycle の3Rはいずれの場合にも適用可能な原則である。問題は、対策を実効あるものとするために、どのようなインセンティブを組み込むかということである。公平な競争条件を確保するためには、各国が同様のルールを順守する必要がある。OECDとしては、ポスト京都議定書の枠組みにおいて、そのための基盤づくりに貢献していきたい。

(2)学習到達度調査(PISA)

読解力、数学的能力、科学的能力について、57カ国40万人の15歳生徒を対象に、00年から3年ごとに調査しており、科学的能力に重点を置いた06年の第3回調査の結果がまとまった。日本については、将来、自分が科学者など科学に関係する仕事に就いていると考える子どもが減少していることが特徴的である。研究開発活動が停滞し、イノベーションや成長が途絶えることを懸念させる結果となっている。

なお、日本の公的教育コスト(6歳から15歳まで子どもを教育するのにかかる公的経費)と学習到達度調査結果を他国と比較すると、日本の教育システムは費用対効果が相対的に高いといえる。

(3)サブプライムローン問題

米国の問題ととらえる向きもあるが、グローバル化がもたらしている問題の一つである。信頼の欠如が経済活動にマイナスの影響を及ぼしており、そのダメージは金融機関の損失額をはるかに上回る。他方、過剰規制は避けなければならない。

(4)政府系ファンド(SWF = Sovereign Wealth Fund )

政府系ファンドは、その規模の大きさもさることながら、透明性が確保されているか否か、経済合理性では必ずしもその行動が予測できないなどの問題がある。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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