日本経団連タイムス No.2891 (2008年1月31日)

連合との懇談会開催

−春季労使交渉めぐる諸問題で意見を交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は23日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、高木剛会長)との懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗会長はじめ、評議員会議長、副会長、評議員会副議長らが、連合からは高木会長はじめ会長代行や副会長ら、合わせて34名が参加した。今回の会合では、今年の春季労使交渉をめぐる諸問題をテーマに意見交換を行った。

■ 御手洗会長あいさつ

会合の冒頭、御手洗会長は、現在の閉塞感を打破し、日本経済を躍動の10年へと導くためには、今後10年で日本を世界最高の所得水準を持つ国にするという明確な目標を掲げることが必要であるとの見解を示した。さらに、付加価値額の増加が国民所得の増加につながっていることを踏まえ、「労使にとっての共通の課題は、総額人件費の原資ともなる付加価値額をいかに高めていくかということである」と、生産性向上に向けた労使の取り組みの重要性を訴えた。

■ 高木連合会長あいさつ

続いてあいさつした高木連合会長は、内需拡大のためには賃金引き上げが、長時間労働是正のためには時間外割増率の引き上げが、日本の社会を改善するためには非正規雇用問題への対応が必要であるとの見解を示した上で、「労使が春の交渉を通じて、いろいろな貢献をしていかなければならない」と述べ、経営側への協力を求めた。

意見交換

意見交換では、連合側は春季生活闘争の最大のポイントとして、「生産性三原則に基づく積極的な成果配分の実現」を挙げ、そのために、(1)労働分配率の反転(2)労働者の組織化と処遇改善(3)中小地場産業も含めた中小共闘の強化と底上げ(4)セーフティネットとしての最低賃金の引き上げ(5)働き方の改革の推進――などに取り組むとの考えを示した。また、今次春季生活闘争の焦点は「時間外休日労働の割増率」であるとして、「共闘組織を立ち上げながら、割増率のグローバルスタンダードをめざす」と述べた。

一方、日本経団連側は、今次春季労使交渉・協議における課題として、「生産性に見合った人件費決定」「ワーク・ライフ・バランスの実現」の2点を挙げた上で、賃金などの労働条件の決定にあたっては、(1)「グローバル競争の激化」「総額人件費管理の徹底」「わが国経済の安定成長の確保」という三つの視点を念頭に置く必要があること(2)自社の支払能力(付加価値額)を基準に個別企業ごとに決定すべきであること(3)恒常的な生産性の向上に裏付けられて付加価値額が増加した場合は、その一部を人材確保などを含めた総額人件費の原資に充てることもあること(4)一時的な業績改善は賞与・一時金に反映させることが基本であること――などを主張した。

このほか、連合側からは、「月例賃金を上げていかないことには消費に結び付かない」「サービス産業の生産性向上という点からも内需の活性化をお願いしたい」など、月例賃金引き上げの重要性を訴える意見が多く出された。

日本経団連側からは、「春季交渉は単に月例賃金を引き上げるかどうかを議論する場ではなく、広く従業員との関係を議論する場である」「今後の労使関係はグローバル化という大きな環境変化の中で、両者で真摯に議論し諸課題を解決していくことが重要である」などの意見が出された。

さらに、労働力人口減少への対応の観点から、「若者、高齢者、女性などを労働市場に取り込むために、働き方の多様性を進めなくてはならない」などの意見が出されたほか、今後の人事・賃金制度のあり方として、「高齢者を処遇する上でも仕事別・役割別賃金の確立は非常に重要である」との意見が出された。

なお、連合が共闘組織を立ち上げた「割増率の引き上げ」の主張については、これに反対する立場から、「むしろ短時間の残業を奨励する結果になる可能性が非常に強いということを危惧している。それよりはワークスタイルを変える、結果的にワーク・ライフ・バランスを実現するということが理想ではないか」との意見が出された。

【労政第一本部労政担当】
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