日本経団連タイムス No.2892 (2008年2月7日)

「仕事と生活の調和の推進」について

−上川・少子化担当相が理事会で講演


1月22日、東京・大手町の経団連会館で開かれた日本経団連理事会の冒頭、上川陽子内閣府特命担当大臣(少子化対策)が「仕事と生活の調和の推進」の取り組みについて講演を行った。

上川大臣はまず、昨年12月18日のワーク・ライフ・バランス官民トップ会議において「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下、憲章)と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下、行動指針)が策定されたことを報告。同会議のメンバーとして取りまとめにあたった御手洗日本経団連会長はじめ会員企業の協力に対して謝辞を述べた上で、「政労使の合意により憲章と行動指針を定めたことは、これから社会全体を動かす大きな起爆力となるものと確信している」と述べた。

また、ワーク・ライフ・バランスは、「国民一人ひとりがやりがいを感じながら仕事上の責任を果たすことを意味しており、働くことの意義を否定するものではない。むしろ働くことの意義を前向きにとらえていこうとするものである」と述べ、その目的が「働く人々が意欲をもって働き、豊かさを実感しながら暮らせるよう、多様な選択が可能な社会をつくること」にあることを説明。EUの経験に触れ、ワーク・ライフ・バランスへの積極的な取り組みが女性の就業参加や出生率の向上、企業の生産性や競争力の向上に結び付いていると紹介した。

さらに、政府は女性の能力活用の観点から、2020年までに、指導的地位を占める女性の割合を30%程度まで引き上げるとの目標を立てているが、現在民間企業の課長相当職に占める女性の割合は5・8%にとどまっていると説明。女性雇用に関する企業の意識や、出産や子育てと仕事の両立が難しく、女性が管理職になることを断念せざるを得ない環境によるところが大きいとして、政府目標を達成するためにも、ワーク・ライフ・バランスの実現が重要であると強調した。

次いで、ワーク・ライフ・バランス推進における企業の役割に触れ、「憲章や行動指針の基本的な考え方は、労使の自主的な取り組みを根幹としており、その成否は企業の取り組みによるところが大きい」と指摘。企業経営の立場から、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けた積極的な取り組みについて理解を求めた。これに関連して、政府は、国民全体が継続的にワーク・ライフ・バランスを実現できるよう、中小企業事業主に対する助成措置の創設などの取り組みを加速するほか、多様な保育サービス等の社会的基盤の再構築、企業や自治体の次世代育成支援行動計画の取り組みの推進に全力を尽くすとの意向を示した。当面、憲章や行動指針を具体的に実践していくため、官民連携シンポジウムの開催や労使団体への協力のお願い、都道府県ごとの労使、自治体、有識者等による推進会議の設置を進めていくと述べた。また、今年を「仕事と生活の調和元年」と位置付け、内閣府に専門部署を設けるなど、憲章と行動指針の理念を国民一人ひとりに浸透させるよう、全力で取り組んでいくと表明した。

最後に上川大臣は、企業に対するお願いとして、「ワーク・ライフ・バランスに成功している企業には、大きな権限をもって実行に移すキーパーソンが存在する」と指摘。例えば「チーフ・ワーク・ライフ・バランス・オフィサー」(CWO)を任命し、トップダウンによる強力な推進体制を構築してもらえば、国民運動の大きな推進力になるとの考えを示した。また、「ワーク・ライフ・バランスに関する情報交換が新しい知見をもたらす。定期的な意見交換の場を設けるので、企業の事例などの情報提供をお願いしたい」と述べるとともに、「ワーク・ライフ・バランスの推進には企業経営者とそこで働く人々双方の意識改革が重要である」として、企業経営者にワーク・ライフ・バランスの牽引車となってほしいと述べた。

【総務本部総務担当】
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