日本経団連タイムス No.2893 (2008年2月14日)

情報通信業界における技術やビジネス動向などで説明聴取

−情報通信委員会


日本経団連の情報通信委員会(石原邦夫共同委員長、渡辺捷昭共同委員長)は5日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、マイクロソフトの初代社長を務めた、古川享・慶應義塾大学デジタルメディアコンテンツ統合研究機構教授から、通信・放送の融合問題に関連して、情報通信業界における最新の技術およびビジネス動向等について説明を聴いた。また、通信・放送政策部会が取りまとめた提言案「通信・放送融合時代における新たな情報通信法制のあり方」の審議を行った。

まず古川教授は、今日、情報通信業界を牽引する技術として、IP(Internet Protocol の略。異なるネットワーク間でやりとりできるようにするための通信上の約束事)技術、デジタル技術等があり、これらは通信と放送の間のネットワークの相互利用を可能とする等、通信と放送の融合を大きく進展させたと述べた。そしてIPが音楽、映画製作、電話、テレビ、医療、社会の安全等、いろいろな分野で用いられている例を紹介した。例えば新潟県中越沖地震の際、新潟県民が通常どおりテレビを見ることができたが、放送事業者のバックボーンのネットワークに接続している、通信事業者のIPネットワークが予備回線として機能したという背景があったことを挙げた。

古川氏は、今後は、IPネットワークを使い、日本と外国の病院間で、手術現場の映像や測定データをリアルタイムでやりとりすることや、既に普及しているワンセグ携帯電話やゲーム機を使って、スポーツ、コンサート、伝統芸能等を、その会場等で、自分の好みのアングル、多言語、解説付きで楽しむことが可能となるだろうと述べた。

また、1月に米国で開催された、世界最大の家電見本市であるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)において、日本の企業が、「米国の放送局、グーグルやユーチューブ等のインターネット会社との提携により、新たな通信・放送融合サービスを米国で提供する」と発表したことを紹介し、日本の企業が新しいビジネスの流れを生む先鋭的役割を果たしていると述べた。

そして、日本の企業は世界最先端の技術や製品をたくさん生み出しており、それらを活用した新たなビジネスの芽は数多く見られると強調。しかしながら、日本の企業が、国内ではなく、米国等で新たなビジネスに挑戦している現状に関し、その原因の一つに、国内では技術として可能となっているサービスを、企業が柔軟に展開することを、法律が縛っていると指摘した。その上で、古川氏は、特定の技術が今後も最高であり続けることはなく、時代の流れの中で少しずつよい技術が出てくれば、それを並行して採用し、最終的な選択はユーザーの判断に委ねるべきであると述べた。

続く意見交換で、IPTV(IPネットワークを使った映像配信)の長所は何かという委員からの質問に対し、古川氏は、「サービスを広告モデルで提供するか否か等、ビジネスモデルに柔軟性があり、また、最新の技術を順次採用できること等がIPTVの優れた点である」と答えた。

最後に、同氏は、日本経団連の提言内容を実現するための実験の場や産学の共同研究の場として、大学院を利用してほしいと締めくくった。

また、当日は、通信・放送政策部会で取りまとめた提言案「通信・放送融合時代における新たな情報通信法制のあり方」を審議し、委員会として承認した。同提言案は、19日の理事会における審議・承認を経て、公表される予定である。

【産業第二本部情報通信担当】
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