日本経団連タイムス No.2894 (2008年2月21日)

企業倫理への取り組みに関するアンケート調査

−約98%で「行動憲章」制定/企業倫理浸透・徹底のため経営トップがメッセージ、約86%で定期的発信


日本経団連は19日、企業倫理への取り組みに関するアンケート調査結果 <PDF> を発表した。これによると、自社の姿勢や行動原則を示した「行動憲章」を制定している企業が年々増加し、2007年には約98%に達していることや、約86%の企業において、経営トップが、企業倫理浸透・徹底のため定期的に社内にメッセージを発信していることなどがわかった。

同調査は日本経団連企業会員1337社を対象に、07年10〜11月に実施したもので、回答社数は593社、回答率は44.35%。調査結果の概要は、次のとおり。

■ 企業倫理に取り組むための組織体制の整備

経営理念の基本的な精神や価値観を踏まえて、その時々の社会的要請に応えた自社の姿勢や行動の原則を示した「行動憲章」等を制定している企業は、97.8%(580社)を数えた。03年79.1%、05年83.0%と着実に増加している。

さらに自社の「行動憲章」を、「行動指針」「就業規則」「業務マニュアル」等に反映している企業は、97.6%(579社)となっている。社内横断的取り組み体制の整備、企業倫理ヘルプラインの設置、教育・研修制度の構築も含め、企業倫理に取り組むための体制整備は進展した。このうち企業倫理ヘルプラインは96.6%(573社)の会社が設置しており、その7割以上が03年以降に設置している。これは、公益通報者保護法や内部統制強化を求めた会社法、金融商品取引法の制定に合わせた動きと考えられる。

企業倫理徹底の取り組み範囲については、自社のみとする企業は16.9%(100社)となっており、81.3%(482社)が国内外の連結会社や主要関係会社にも運用を広げている。また、購買方針に反映させている企業も78.2%(464社)あった。

■ 企業倫理の浸透・徹底のための方策

企業倫理の浸透・徹底のために、85.8%(509社)の企業において経営トップが定期的に社内にメッセージを発信している。メッセージ発信の頻度は、1カ月に1回以上が509社のうち23.6%(120社)と最も多く、四半期に1回以上が23.4%(119社)、半年に1回以上が19.3%(98社)と続いている。発信は、社内報、研修、事業所訪問時など、さまざまな機会をとらえて行われている。

社外・社会一般に情報開示している企業は、96.0%(569社)。その発信手段としては、ホームページへの掲載、CSR報告書の発行、株主への説明が、かなりの企業で行われている。

教育・研修を実施している企業は96.0%(569社)あり、会合形式での開催(93.4%、554社)のほか、e−ラーニングやテキストを用いた各自学習方式(47.0%、279社)、グループディスカッション(39.8%、236社)など、多様な形態をとっている。

企業倫理の浸透度合いを測るために、何らかの評価を実施している企業は、96.3%(571社)ある。その方法としては、内部監査(74.4%、441社)のほか、社内のアンケート調査やヒアリング(63.9%、379社)、ヘルプラインの運用状況やその相談内容の分析(62.7%、372社)など多面的な評価を行っている。その際、顧客や取引先からの声(27.8%、165社)や、外部の専門家、有識者の意見や評価(21.8%、129社)を参考にしているケースもある。

企業倫理重視した経営判断実施など

■ 今後の課題

経営トップの今後の課題としては、(1)企業倫理を重視した経営判断の実施(2)現場の状況把握、現場との対話を通じて末端まで伝える努力をすること(3)風通しのよい企業風土づくり――などが指摘されている。

企業全体の課題としては、意識の共有、内部監査制度のさらなる充実、個々の従業員への浸透度合いを測る手法の確立、ヘルプラインの周知徹底と有効活用などが挙がった。また、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて消費者・生活者のニーズを把握して事業活動に反映させること、情報開示、社会への啓発活動を通じて安全・安心を高めていくことも課題となっている。

【社会第二本部企業・社会担当】
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