日本経団連タイムス No.2896 (2008年3月6日)

九州経済懇談会を大分で開催

−成長創造〜活力と魅力あふれる「希望の国」実現へ論議


日本経団連(御手洗冨士夫会長)、九州経済連合会(九経連、鎌田迪貞会長)は2月20日、大分市内のホテルで「第60回九州経済懇談会」を開催した。懇談会には、日本経団連側から、御手洗会長、張富士夫副会長、渡文明副会長、森田富治郎副会長、槍田松瑩副会長、前田晃伸副会長、佃和夫副会長、氏家純一副会長、池田弘一評議員会副議長が、また、九経連側は、鎌田会長をはじめ会員約150名が参加し、「成長創造〜活力と魅力あふれる『希望の国』の実現に向けて」を基本テーマに意見を交換した。

九経連の鎌田会長は、開会あいさつで九州経済の現状に触れ、米国景気の後退懸念や原材料価格の高騰などに加え、九州は、全国平均より速いペースで人口減少、少子・高齢化が進行しているとして、懸念を表明した。一方、自動車やデジタル家電を中心に、輸出や設備投資は高水準で推移しているという好材料にも触れ、九州経済の発展を支えるカギとして、「アジアとの連携強化」や「遅れている社会資本の整備」などを挙げた。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、国民生活の豊かさを実現していくためには確固たる経済成長を実現することが必要と指摘。提言「成長創造〜躍動の10年へ」が掲げる世界最高の所得水準の達成という目標に向けて、改革のスピードをさらに加速する必要があると述べた。特に、改革を確実に前進させるプロジェクトの一つとして、道州制を挙げた。広域経済圏の形成をそのステップとし、地域特性を活かした産業振興のためには、インフラ整備を行い、国際競争力を強化することが必要で、結果として、地域の自立と地域経済の活性化が実現すると述べた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から張副会長が税制改正をめぐる動向、渡副会長が貿易諸手続改革の動向、前田副会長が規制改革をめぐる今後の動きについてそれぞれ報告した。「税制改正」では、消費税を含む税制抜本改革と平成20年度税制改正の両面から与野党に働き掛けを行ってきたこと、「貿易諸手続改革」では、コンプライアンスの優良な企業(AEO)に対する手続きの簡素化の進行状況や保税搬入原則の廃止の取り組み、「規制改革」では、規制改革要望の取りまとめや規制改革の今日的意義の再確認の取り組みなどについて説明した。

一方、九経連側からは、まず明石博義副会長が「国土形成計画広域地方計画」について報告。九経連として、(1)九州アジア・ゲートウェイ戦略(2)知の連携拠点創造戦略(3)低密度居住地域の圏土保全戦略――の三つの戦略を提案したことを紹介し、その実現のためには、地域のイニシアチブによって戦略的な投資が可能な体制整備、制度設計が必要になると説明した。

次に小栗宏夫副会長が「農業・食品産業の活性化に向けた取り組み」について報告。食品メーカー、研究機関、観光産業などと連携し、消費者ニーズに基づく高品質・高付加価値商品の創造、域外の販売推進体制の構築、既存高品質産品の掘り起こし・ブランド化、産学官連携による高品質食品の開発など、農業・食品産業の競争力強化の取り組みを紹介し、フード関連産業の競争力強化が、九州全体の活性化につながると述べた。

続いて、渡辺顯好副会長が、「九州における自動車産業の現状と課題」について報告。地場製造業では、中核人材や研究開発者の確保、育成が十分といえず、技能伝承可能な人材が不足していると指摘した。一方、自動車産業の集積が九州全域へと拡大し、物流の効率化、コスト削減が命題とされる中、高規格幹線道路や空港・港湾へのアクセスなどの交通インフラ整備が遅れていることを指摘。交通インフラ整備は、自動車産業のみならず、リーディング産業である半導体や広域観光振興の観点から不可欠と強調した。

「道州制」などで意見交換

■ 自由討議

第2部の自由討議では、九経連側から、(1)道州制の九州モデルの検討を行っている。道州制実現に向けて、国民的な議論を喚起するためのPR方策や中央省庁などへの働き掛けが必要(大野芳雄副会長)(2)再生資源の海外流出防止の観点から、適正な国際資源循環の仕組みづくりが必要。環境ビジネスの受益者と提供者の連携を強化し、ニーズとシーズを共有する場としての「環境ビジネス交流会」の開催など、環境ビジネス育成の取り組みが不可欠(網岡健司資源・環境委員会委員)(3)地理的・歴史的にアジアとの関係が深いことは九州の強み。経済連携協定(EPA)の締結による東アジア共同体構築のための環境整備が必要(高橋靖周副会長)(4)イノベーションを創造し、新しい産業や事業を継続的に創出して地域産業を活性化していく観点から、人材育成は非常に重要。九州では産業クラスターをはじめ、さまざまな分野で産学連携が進められているが、地域の企業ニーズにいかに対応していくかが課題(木瀬照雄副会長)(5)大都市圏でのPR不足、効果的な誘客方策の検討などの課題に対応すべく、第二次九州観光戦略を策定、施策の重点化により目標達成をめざす(田中浩二副会長)(6)少子化問題には行政だけでなく、社会全体で取り組むことが必要(池内比呂子九州女性の会副会長)――などの発言があった。

これに対して日本経団連側が、(1)道州制の実現に向け国民的な機運を高めるためには、道州制が国民生活にどのようなメリットをもたらすかをわかりやすく示していくことが重要。全国各地で開催されるシンポジウムなどを通じて、国民の理解を深めていく(池田評議員会副議長)(2)循環型社会の形成や資源政策、アジア諸国との関係強化の観点から、国際資源循環の適正化に向けた取り組みの推進が急務(佃副会長)(3)将来の東アジア経済共同体の構築も視野に入れて、EPAの「拡大」と「深化」に向けて積極的に取り組む(槍田副会長)(4)国際競争力向上の観点からイノベーションを創出できる人材の創出が不可欠。産学の緊密な対話によるカリキュラム共同策定や企業人材の教員派遣など、具体的行動の積み重ねが重要(氏家副会長)(5)九州が一体となって北東アジア観光ゾーンの形成に取り組むことにより、海外からの旅行者を増加させ、観光産業の振興や国際競争力の強化につなげていくことを期待(佃副会長)(6)政府が国民運動の一環として制定した「家族の日」「家族の週間」をはじめとする社会全体の意識を高める活動は、少子化の流れを変えていく上で意義がある。地域の企業と行政が連携した取り組みとともに、国による積極的な取り組みが求められる(森田副会長)――と述べた。

会議の総括で、御手洗会長は、「九州経済界が、厳しい状況の下、直面する環境変化への対処や将来への基盤づくりに向け努力していることに深く感銘を受けた」と述べ、九州経済活性化に向けた独自の取り組みの一層の強化に期待を示した。

【総務本部総務担当】
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