日本経団連タイムス No.2898 (2008年3月20日)

「支払能力システムの使い方セミナー」開催

−適正な賃金の決定へ/経営計画策定のポイントなど解説


日本経団連事業サービス(御手洗冨士夫会長)は7日、東京・大手町の経団連会館で「支払能力システムの使い方セミナー」を開催、約60名が参加した。日本経団連が提唱している支払能力システムとは、企業の将来目標の設定から経営計画の策定を経て、自社の付加価値生産性に見合った適正な賃金を決定するもの。今回のセミナーでは、日本経団連労政第一本部が著した『支払能力システムの使い方』の内容を事務局担当者がよりわかりやすく解説するとともに、今後5年間の計画値を入力すると経営計画が自動的に策定されるエクセルファイルを配布、その使い方にも言及した。

同セミナーではまず、支払能力システムは、(1)具体的な経営計画策定の手法であること(2)中長期の経営計画をもとに人件費を決定すること――が特徴であると説明。その上で、支払能力システムの要となる経営計画の策定にあたっては、成長目標として従業員1人当たりが生み出す付加価値を示す「付加価値労働生産性」を、また体質改善目標として総資本に占める自己資本の割合である「自己資本比率」の二つを柱に、「時として相反する性格をもつ成長目標と体質改善目標をバランスよく計画することがポイントとなる」と説いた。

さらに、経営計画の策定にあたっては、財務諸表上の指標を用いて、付加価値労働生産性関連や効率性関連・体質改善目標関連、人件費関連など、さまざまな経営指標を算定して経営分析をすることの重要性を指摘した。

続いて、モデル企業を例に、実際に経営計画を策定し、その手順を解説。過去5年間の経営指標の分析により、モデル企業では、(1)付加価値労働生産性と1人当たり人件費がともに伸び悩んでいる(2)自己資本比率や有利子負債・負債比率がほとんど変わっておらず財務体質の強化が進んでいない(3)現状打開には積極的な投資と要員配置の展開が必要である――と結論付けた。そこで、経営改善のために、新型のロボット設備の導入や営業・販売体制の拡充などを行うこととし、それをもとに各経営指標における5年後の計画値を定め、経営5カ年計画を策定した。

次に、モデル企業を例に策定した経営計画の整合性を確認。その際には特に、1人当たり人件費の伸び率が付加価値労働生産性の伸び率の範囲内に収まっているか、付加価値に占める人件費の割合である労働分配率の推移はどうかに着目すべきであるとした。また、労働分配率について、企業の成長と両立する労働分配率が適正であるとした上で、「労使にとって共通の課題は生産性の向上であり、付加価値を高めていくことである」とした。

さらに、経営計画を実現させる方策として、(1)付加価値労働生産性の向上には1人当たり売上高と付加価値率、労働装備率、設備投資効率(2)自己資本比率を効率的に高める総資本回転率の向上には当座資産と棚卸資産、固定資産の回転率――をそれぞれ改善することを挙げた。

最後に、従業員を雇用することによって企業が負担する費用の総額である総額人件費管理の重要性について触れ、所定内給与を1とすると、総額人件費は約1.7になることから、賃金決定に際しては、総額人件費を決定した上で、所定内給与など人件費の各構成要素に配分するという総額人件費管理の徹底が求められると結んだ。

参加者からは、「支払能力システムの概要・活用の仕方がよくわかった」「経営知識の再確認ができた」などの声が寄せられた。

【日本経団連事業サービス新規事業担当】
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