日本経団連タイムス No.2902 (2008年4月17日)

今後の国際協力のあり方で提言

−基本的考え方や具体的課題、包括的に取りまとめ


日本経団連は15日、提言「今後の国際協力のあり方について」を公表した。同提言は、今年5月の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)、7月の北海道洞爺湖サミットにおいて、わが国の国際協力に対する姿勢が世界から問われることになることを控え、国際協力に関する日本経団連の考え方を包括的に取りまとめたものである。提言の概要は次のとおり。

I.今後の国際協力に関する基本的考え方

1.国際協力をめぐる国際潮流

かつて世界第1位だった日本のODAは、米国、ドイツ、フランス、英国に次ぐ第5位に転落した。一方、援助をめぐる国際潮流は、貧困削減偏重から、経済成長・インフラ整備の再評価へと変化してきており、日本が活躍できる領域は広がりつつある。

2.国際協力への戦略的対応

日本の国際協力を「国際益」のみならず「国益」に沿って、戦略的に実施することが重要である。その際の主な視点は「経済成長への貢献」である。途上国を含めた世界経済の成長は、日本経済にとっての利益でもあり、被援助国の経済成長につながる国際協力は、有力な手段である。併せて「資源・エネルギーや食料の確保」「地球環境問題への対応」といった視点も重要である。

3.国際協力における課題

第一の課題は「必要なODA予算の確保」である。外交上のプレゼンスや国益に及ぼす影響を考えれば、10年以上続いているODA予算の削減に歯止めをかける必要がある。
第二の課題は「官民連携の推進」である。世界の援助潮流が経済成長重視に回帰しつつある中、日本企業の技術力を活かした投資への期待が高まっている。
第三の課題は「国際機関におけるイニシアティブ発揮」である。日本は、世界トップクラスの金額を国際機関に出資・拠出しているものの、存在感や発言力は必ずしも大きくない。拠出金の配分や人事交流を戦略的に行う必要がある。
第四の課題は「国民理解の促進」である。情報公開の徹底や、教育・広報活動とあわせて、国益上の意義に関する啓発が必要である。

II.国際協力における具体的課題―「官民連携」を中心に

1.新しい「官民連携」に向けて

近年、欧米先進国や国際機関において「官民連携」の積極化が見られる。こうした事例に学びつつ、日本においても官民連携を進める必要がある。
官民連携の重点分野・政策としては、経済成長、資源・エネルギー、地球環境問題が挙げられる。例えば、東アジアとの経済関係を一層強化する上では、現地の膨大なインフラ需要に官民挙げて対応することが極めて重要である。また、アフリカの経済成長に向けては、民間企業が進出するためのビジネス環境整備をODAを活用して行うことが期待される。
官民連携の具体的手法例としては、途上国における企業活動の周辺インフラを公的資金で整備することや、官民パートナーシップによるインフラ事業への民間企業の参入、民間の知見やノウハウを活かした途上国の産業人材育成、企業のCSRとODAの連携などが期待される。
こうした官民連携の促進に向けた新たな枠組みとして「官民が定期的に対話する場の設置」「現地ODAタスクフォースへの民間企業の参加」「民間の提案による官民連携案件づくり」が課題である。日本経団連は、こうした課題に主体的に取り組んでいく。

2.新JICA・新JBICへの期待

JBIC(国際協力銀行)の円借款部門と統合する形で今年10月に発足する新しいJICA(国際協力機構)には、三つの援助スキーム(無償資金協力、技術協力、円借款)の有機的連携や、円借款の迅速化などを期待する。新しいJBICには、今後とも企業支援の役割を果たすとともに、新JICAとの連携を確保するよう期待する。

【国際第二本部国際協力担当】
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