日本経団連タイムス No.2905 (2008年5月22日)

提言「国際競争力強化に資する課題解決型イノベーションの推進に向けて」を発表

−「課題解決に向けたオープン・イノベーションの仕組み」など


日本経団連は20日、提言「国際競争力強化に資する課題解決型イノベーションの推進に向けて」 <PDF> を発表した。同提言は、欧米・アジア諸国が成長力強化にしのぎを削る中、わが国の国際競争力強化、地球規模の課題解決に向けたイノベーション創出力を高めるべく、「産学官協働によるオープン・イノベーションを促進する仕組み」「科学技術政策の推進体制」「企業、大学、研究開発独法の機能」の改革方策を提言したものである。

第1に「課題解決に向けたオープン・イノベーションの仕組み」については、わが国はこれまで、産学官のさまざまな関係者が一堂に会し、将来を見据えた研究開発のビジョンや、その実現のための研究計画を策定する視点が弱かったことから、産業界が主導的な役割を担い、産学官協働のプラットフォームを創設し、国際競争力の源泉となる技術領域の戦略研究計画を策定すべきと提言している。その実現に向け、日本経団連としても、潜在的なニーズの把握等に努め、オールジャパンの取り組みに発展するよう関係方面に働きかけることをうたった。政府においても、関係府省・大学・独法・地方自治体等の参加を奨励するとともに、その成果を国家プロジェクトとして認定し、重点的に資源を配分する仕組みを創設することを求めている。

その他、道州制もにらんだ世界トップレベル拠点の形成、社会還元加速プロジェクトと特区制度との連携、先端融合領域イノベーション創出拠点の見直し、科学技術政策とODAとの連携等を提言している。

第2に「科学技術政策の推進体制の整備・充実」として、政府の第3期科学技術基本計画で掲げた5年間の政府研究開発投資の総額目標25兆円の達成が危ぶまれる現状にかんがみ、政府が2009年度予算編成において目標達成を強くコミットし、特に地球規模の課題解決に資する予算を抜本的に拡充することを求めた。

また、科学技術政策の司令塔たる総合科学技術会議の機能強化に向け、国家的課題について、総合科学技術会議が府省の枠を超え運用する特別の予算枠を既存予算の増分として創設するとともに、国際競争力強化の観点から勧告・評価を行う組織を新設すべきとしている。さらに、有識者議員の構成も見直し、産業界出身者を1名以上増員することを提言した。

第3に「研究開発独法、大学の課題」として、研究開発独法については、所管大臣が策定する中期目標において成果目標や達成時期等を具体的に記載すること等を求めている。また、大学等の人材育成については、修士課程における研究者向けと技術者向けの複線型カリキュラムの設定、学生や教員の海外留学の機会の増大等を指摘した。

最後に、イノベーション政策の今後の課題として、2011年度からの第4期科学技術基本計画の策定を見据え、企業、大学、政府、公的研究機関の相互作用や、科学技術、教育、知財、規制改革等を含む総合的なイノベーション政策について問題提起しており、日本経団連として今後さらに検討を深めることとしている。

【産業第二本部開発担当】
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