日本経団連タイムス No.2905 (2008年5月22日)

次代の産業界担うリーダー育成へ

−「日本経団連フォーラム21」第19期の講座を開講


日本経団連事業サービス(御手洗冨士夫会長)は、次代の産業界を担うリーダー育成を目的に1990年から毎年実施している年間講座「日本経団連フォーラム21」の第19期の開講式を14日、都内で開催した。開講式には、第19期のメンバーとなる企業の役員・部長クラスのほか、チーフアドバイザーを務める御手洗日本経団連会長、アドバイザーを務める茂木賢三郎 キッコーマン副会長、寺島実郎 三井物産戦略研究所社長・所長、山内昌之 東京大学大学院総合文化研究科教授らが出席。御手洗チーフアドバイザー、茂木アドバイザー、寺島アドバイザー、山内アドバイザーのあいさつ、同フォーラムOBのあいさつなどの後、メンバー一人ひとりが自己紹介を行い、フォーラムに参加するにあたっての期待や抱負などを語った。

あいさつの中で御手洗チーフアドバイザーは、現在の経営者に最も求められる資質は、猛スピードで進んでいく変化に迅速かつ的確に対応していく「スピード感」と「変身力」であると指摘。今日の経営を航海に例え、企業経営を取り巻く環境=大海を読み、企業を導く航海士が経営者であると語った。そのためにも、フォーラム21という研鑽の場で、それぞれの分野の第一人者の講演を聞き、その見識に触れて教養を高めるだけでなく、講師との質疑応答やメンバー同士の意見交換などを通じて、普段の仕事では得られない、経営リーダーとしての成長につながる刺激や発見を得て、さらなる活躍につなげてほしいとの期待を示した。

茂木アドバイザーは、フォーラム21を創設した鈴木永二 日経連会長(当時)は、「これからの経営者は世界観、歴史観、倫理観を持たなければならない」と述べ、また根本二郎 元チーフアドバイザー(日本経団連名誉会長)は、「自分がどういう立ち位置にいるかを、歴史的な時の流れと、世界的な広がりという座標軸で確認し、今後どのような価値を追求していくべきかを考えなければいけない」と説いたことを紹介。その上で、「フォーラム21は、こうした経営の先輩たちの立派な構想の下で、運営されてきたものである」とあいさつした。

また寺島アドバイザーは、フォーラム21の価値として、参加者の間に「仲間」としてのネットワークが構築できること、自分が属する会社の中でしか通じないものの見方・考え方から解放され、自分が生きている時代を見直す、すなわち時代認識を本質的に考えるきっかけになることの2点を指摘、「経営とは時代認識にほかならず、卓抜な感受性を持って時代に立ち向かう必要がある。ことに参加者の世代は、自己の判断が、同僚や後輩の運命までも左右してしまう立場にある者が多く、その責任は重大である」と述べた。

山内アドバイザーは「時間軸の中で歴史をどうとらえるかを、このフォーラムで考えてほしい。また、一つの場所だけにこだわっていては物事を客観的、多面的に見ることができない。三点測量的なものの見方を歴史学、政治学の観点から参加者と共有していきたい」との考えを示した。さらに、経営戦略を考えるにあたって重要な事項である、建設的な立場から批判や批評を行うということを学ぶとともに、自らを絶対として他をおとしめるという態度を捨て、相手の優れたところを学ぶ力を、歴史を通じて養ってほしいと参加者にアドバイスした。

OBあいさつでは、第18期修了生の馬本章弘 大林組理事・東京建築事業部統括部長、中山明彦 三菱重工業社長室グループ経営推進部長が、「フォーラム21においては、業務に追われる日常では得られない時間を過ごすことができるし、各界一流の講師の講義を生で聞くことができる。異業種交流が可能であるし、参加メンバー間に固い絆が生まれる」「課題図書の読破など厳しい面もあるが、フォーラム21は大変楽しい。日常生活を変え、自分の仕事のやり方を変える契機ともなるし、生涯の友、支援者、理解者を得ることができる」と自身の体験を語った。また第10期修了生の三宅占二 キリンビール社長は、「楽しく、有意義に過ごせる時間だ。異業種の人たちと腹を割って話せる、得がたい機会である。講師も最高レベルですばらしい。知識・見聞も人脈も広げることができるので、高い志と意欲を持って臨んでほしい」とアドバイスした。

第19期生の自己紹介ではメンバーが、「現在の自分に足りないところを学びたい」「参加メンバーの皆さんと積極的に議論したい」「自分の視野と人的ネットワークを広げたい」などと、同フォーラムに参加するにあたっての抱負や決意などを述べた。

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第19期の総合テーマは、「未来企業のリーダーシップを学ぶ」。御手洗会長がチーフアドバイザー、茂木氏と寺島氏、山内氏に加え、竹内弘高 一橋大学大学院国際企業戦略研究科科長がアドバイザーを務める。

来年3月までの約1年、企業経営や国際関係、歴史、政治・経済・社会問題など広範な分野について、各界の第一人者の講演を聴取、メンバー間での討議を毎月行うほか、合宿研修や洋上集中講座、海外視察なども実施する。

【日本経団連事業サービス研修担当】
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