日本経団連タイムス No.2906 (2008年5月29日)

シュレッセルス・ラトビア運輸相来訪

−佐々木ヨーロッパ委員会共同委員長と意見を交換


日本経団連の佐々木元ヨーロッパ委員会共同委員長は15日、東京・大手町の経団連会館でラトビア共和国のアイナールス・シュレッセルス運輸大臣と懇談し、日本とラトビアとの経済関係をめぐって意見を交換した。シュレッセルス運輸相の発言概要は次のとおり。

■ 日本との経済関係拡大を期待

2004年に日本経団連のミッションがラトビアを訪れて以降、両国関係に変化をもたらす重要な出来事があった。一つは、06年の東京における大使館の開設であり、もう一つは、昨年の天皇・皇后両陛下のラトビア訪問、一昨年のラトビア首相と外相の訪日など要人の往来である。今回の訪日の目的は、いまだ両国の潜在力を反映していない経済関係を拡大すべく協力の可能性を探ることにある。

■ 欧州の物流・ロジスティクス拠点をめざす

ラトビアとロシアの国境は、欧州とロシアを含むCIS諸国との境界をなしている。近年、EUとCIS諸国間の貿易は急激な伸びを示しており、コンテナ取扱量は今後20年で約6倍に達するとの予測もある。そうした中で、ラトビアとしては、今後10〜20年間で物流・ロジスティクス面での戦略的重要性を高め、アジアにおける香港やシンガポール、欧州におけるロッテルダムに匹敵する地位を築くことをめざしている。

現在、ロシア向け貨物の陸路の輸送ルートは国境付近で渋滞が起きており、切実な問題が生じているが、ラトビアは3つの自由貿易港を保有している点で優位である。今後見込まれる膨大な需要にかんがみ、500〜700万TEU(Twenty‐foot Equivalent Unit、20フィートコンテナ換算の単位)の貨物取扱能力を有する港湾施設の建設も計画されている。また、鉄道建設により、国境付近での混雑解消や欧州からCIS地域への輸送日数の短縮が期待できる。さらに、リガ国際空港は、旅客量が過去4年間で5倍以上の伸びを記録し、来年着工予定の新ターミナルは、年間2000万人以上の旅客取扱量を備える予定である。日本をはじめアジアからの旅客のEU域内での最初の目的地となるべく、今後1年半〜2年以内に直行便を就航させたい。同空港が日本から欧州への最短ルートとして機能することになれば、バルト諸国、スカンジナビア諸国など欧州全体にとって有益である。観光拠点としてだけでなく、貨物輸送の拠点としても魅力は大きいだろう。

ラトビアの地理的条件を活かして発達した、これら輸送インフラに加えて、ロシア語の運用能力、ロシアと欧州双方のメンタリティを理解できる点がラトビアの強みである。

■ ビジネス・チャンス拡大に向け具体的な話し合いを

佐々木共同委員長から提案のあった日本とEUとの経済連携協定(EPA)など、日EU間の経済分野の協力のあり方の将来像は、私が思い描くそれと一致する。今回の懇談を通じて両国の経済関係が進展することを期待したい。ラトビアとしては、日本との経済協力関係の促進を優先課題とし、今後も積極的に取り組んでいく所存である。ラトビアは04年にNATO、EUに相次いで加盟するとともに、他の欧州諸国と同水準の外国投資の保護に関する法制度も整備した。ラトビアへの投資を検討する際は、もはや安全保障の問題を考慮する必要はなく、純粋にビジネスの観点から検討すればよい状態になっている。日本とラトビア双方の経済界に裨益するビジネス・チャンスについて具体的な話し合いを進めたい。日本経団連がラトビアに改めてミッションを派遣することを希望する。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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