日本経団連タイムス No.2906 (2008年5月29日)

「今後の労働法制のあり方」

−坂本参院議員が講演/労働法規委員会


日本経団連は12日、都内で労働法規委員会(藤田弘道共同委員長、市野紀生共同委員長)を開催した。

今回の会合では、参議院議員の坂本由紀子氏を招き、「今後の労働法制のあり方」と題する講演を聴いた。坂本氏は、国会の現状について語り、「ねじれ国会と言われているが、単なる対立ではなく、協同しなければならないときは、ともに協力し合って課題を解決していくべきである」「政策を検討するにあたっては、選挙対策ではなく、財源などもきちんと考慮しながら検討を進めなければならない」などと述べた。

また、規制改革会議について、「会議全体としての意見ではなく、委員個人の考えで審議中の法案等に対し、ホームページ等で厳しい意見を寄せることがあり、それによる審議への影響は大きい。必要な規制改革は進めなければならないが、それぞれの改革を実施する必要性や、改革により生まれるメリット等を十分検討した上で提案すべきである」と語った。

さらに、労働時間規制に関連して、「今の労働者の働き方にあわせて、労働基準法等、法律の見直しを図っていく必要があると思っている。自己管理型労働制については、成果を正当に評価し、賃金に反映する仕組みとすることや、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けても必要なものであることを訴えていくことで、国民からの理解も得られると考えている。しかしその前に、いわゆる「名ばかり管理職」をなくしていくことや、不払い残業の撲滅など、現行の不適切な取り扱いを是正していく必要がある」などの発言があった。

非正規労働者と社会保障については、「『非正規労働』=『悪』ではない。非正規労働という働き方は労働者が自分のライフスタイルや価値観に合わせて選択しているところでもある。正規労働者との極端な格差が生じていることが問題で、格差があるところは見直しを図っていく必要がある」「社会保障制度は、医療制度の見直しなどとあわせて、広い視点で見直しを図っていく必要がある」などと述べた。

参加した委員からは、「労働法制の見直しを図る際には、企業の体力差も配慮すべきであり、そうしないと、法改正に対応することのできる大企業とそうでない中小企業との格差が広がっていくばかりである」などの意見が出された。

坂本氏による講演の後、同委員会の下部組織である労働安全衛生部会、労働法企画部会、労務管理問題検討部会の2008年度検討テーマや08年度規制改革要望(内閣府が6月=あじさい月間、11月=もみじ月間に集中して受け付け)の要望内容に関する審議が行われた。

最後に、藤田共同委員長が、「私の経営哲学」と題し、講演を行った。藤田共同委員長は、「就職してから2回の大病を患ったが、その都度自分を見つめ直し、仕事のやり方や職業観が変わったこと」「部下を含め、人を判断するには3年ぐらいかかるので、性急にうわべで人を判断してはならないこと」「反対する上司に対して、あらゆる手を尽くして説得し、仕事を進めた結果、大きな成果を挙げた経験」など、長い職業生活の中で培われた職業観や組織・経営に対する考え方などについて、時にユーモアも交えながら含蓄ある話を披歴(ひれき)した。

【労政第二本部労働法制担当】
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