日本経団連タイムス No.2906 (2008年5月29日)

海洋基本計画について総合海洋政策本部の本田参事官から聴く

−今後の施策の進め方など/海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連では、昨年10月に提言「今後の海洋政策のあり方と海洋基本計画策定へ向けて」を取りまとめ、政府の海洋基本計画に対する産業界の意見を表明した。その後、今年3月に海洋基本計画が閣議決定されたことから、海洋開発推進委員会総合部会(杉浦哲部会長)を開催し、内閣官房総合海洋政策本部の本田直久参事官から、海洋基本計画の内容や今後の施策の進め方等について説明を聴いた。概要は次のとおり。

1.海洋基本法の概要

海洋基本法は昨年4月27日に成立し、7月20日に施行された。6つの基本理念と12の基本的施策によって構成されており、海洋政策推進のため、首相を本部長、内閣官房長官と海洋政策担当大臣を副本部長とする総合海洋政策本部を内閣に設置することが明記されている。
総合海洋政策本部は昨年7月に設置され、最初のミッションが海洋基本計画の策定である。

2.海洋基本計画の概要

(1)海洋をめぐる状況

これまで、わが国には海洋の利用者の立場に立った政策はあったが、海洋の管理者としての政策はなかった。近年の海洋利用の輻輳(ふくそう)、海洋資源の存在等により、海洋を管理する立場で政策を立案するシステムが不可欠となってきた。国際的な枠組みとして国連海洋法条約があるが、あいまいな部分が多く、規範形成に向けた国際的な取り組みや開発と環境に関する国際動向等に対し、海洋を管理する立場から明確な姿勢で対応することが必要である。

(2)基本的な方針

(1) 開発利用と環境保全の調和

海洋資源を開発、利用するためには、海洋環境の保全との調和に十分配慮した上で、技術開発、体制整備等に努めることが必要である。水産資源やエネルギー・鉱物資源に対する所要の措置や、海上輸送量の増大に対する油の流出や大気汚染の防止等が必要である。

(2) 海洋の安全の確保

海賊・テロ対策についての国際的な連携や協力の促進等、海難防止対策等、災害防止策、被害拡大防止策、災害復旧策の推進が必要である。

(3) 科学的知見の充実

基礎研究および政策課題に対応した調査、研究開発を戦略的に推進する必要がある。当面、海洋科学技術に関する新しい構想に係る提案等について、可能なものから逐次実現していきたい。

(4) 海洋産業の健全な発展

競争条件整備や体質改善等が必要である。豊富な海洋資源や、多様で広大な海洋空間を活かした新たな海洋産業の創出に積極的に取り組むとともに、人材の育成・確保が求められる。

(5) 海洋の総合的管理

海洋の利用者が増えたことにより、新たなルールが求められるようになった。この点で、日本と中国では事情が異なり、既に海洋政策に関して一定の画が描かれている日本が中国のまねをするのは無理であり、今までの画を見ながら必要なところに手当てするのが妥当であろう。

(6) 海洋に関する国際協調

わが国の権益を確保し、秩序を安定したものとすべく、国際ルールに即した問題解決を追求する必要がある。また、海洋における自由と安全の確保や海洋資源の開発等に関する国際的な秩序の形成等において先導的役割を担うとともに、各国との連携、協力を推進する必要がある。

3.懇談

続いて出席者と本田参事官との間で懇談が行われ、日本経団連側から、府省連携によるワンストップサービスの重要性を指摘したところ、本田参事官から、現在検討中の、新しい構想の推進システムができればワンストップサービスも可能になるとの回答があった。
また、総合海洋政策本部が優先順位を付けた施策に対する予算措置の担保については、各省庁が施策の重要性を認める仕組みを構築したいとの回答があった。
さらに、日本経団連側から、総合海洋政策本部のリーダーシップにより、各省庁が連携し多目的洋上プラットフォームを推進することの重要性について指摘した。

【産業第二本部海洋担当】
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