日本経団連タイムス No.2908 (2008年6月12日)

日本経団連中東欧ミッション派遣

−政府・経済界首脳と意見交わす


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は、2004年のEU加盟以降高い成長を続け、わが国企業の進出が加速する中東欧諸国の重要性にかんがみ、2日から6日にかけて、ハンガリー、チェコ、ポーランドにミッション(団長=御手洗会長)を派遣した。懇談の概要および成果は次のとおり。

■ 訪問国における事業・投資環境の改善

訪問各国からは総じて、日本からの投資の拡大に対する大きな期待が表明された。日本経団連からは、ハンガリーに対しては、緊縮財政政策の一環として導入された連帯税や病気休暇制度の運用、残業時間規制の改善などを求めた。ハンガリー政府からは、残業時間規制の一層の緩和の方向性が示されるとともに、社会保障協定についても早急に締結する用意があるとの発言があった。
チェコに対しては、中長期的な視点に立ってヒトへの投資に取り組むこと、特に優れた技術力の維持・強化のため、企業・大学・公的研究開発機関の協力の強化を求めた。チェコ政府および経済界からは、産学官連携に向けた現在の取り組み状況について紹介がなされた。
ポーランドに対しては、インフラ整備の推進ならびに官僚主義の弊害の是正等を要請した。ポーランド政府からは、12年のサッカー欧州選手権の開催等に向け、インフラの一層の改善を進めるとの説明があった。
また、いずれの国においても、これまでの組立型産業重視から高付加価値・知識集約型産業育成への政策シフトがみられるとともに、中産階級の拡大に伴う消費市場としての重要性が高まるなど、中東欧諸国の位置付けがダイナミックに変化しつつあることが確認できた。欧州の中心としての地理的優位性から、物流の拠点としても注目されつつあり、今後、日本企業にとって、これら中東欧諸国に対し、より付加価値の高い製品を供給していくことが不可欠な戦略となると評価できる。
なお、各国ともに、労働力の不足・賃金の上昇などの課題も顕在化しつつあり、解決に向けた各国政府の取り組みを注視していく必要がある。

■ 日EU経済連携の強化等(日EU・EPA・投資協定)

日本経団連の提言「日EU経済連携協定に関する共同研究の開始を求める」(07年6月)に基づき、経済連携協定(EPA)を含め、わが国とEU全体との経済関係の一層の緊密化に向けた協力を呼びかけた。いずれの国からも、こうした協力への肯定的な評価が示され、今後、訪問各国により、EU加盟国としての立場から、日EU・EPAの推進に向けた取り組みがなされることが期待される。日本経団連からは併せて、各国との間で当該国における外国投資の保護を主な目的とする投資協定の締結を要望し、各国から前向きな回答を得た。

■ グローバルな課題(地球温暖化問題)

日欧がともに直面するグローバルな課題についても意見交換を行った。地球温暖化問題については、日本経団連の基本的立場(ポスト京都議定書の国際枠組みへのすべての主要排出国の参加、セクター別積み上げ方式の採用による公平な削減目標の設定等)に対し、各国から理解と一定の支持を得ることができた。

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日本経団連では、これらの成果を踏まえ、今後も中東欧諸国・EU全体との緊密な政策対話を通じ、日欧経済関係のさらなる緊密化を推進していくこととしている。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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