日本経団連タイムス No.2910 (2008年6月26日)

国際エネルギー情勢めぐり田中IEA事務局長と懇談

−OECD諮問委員会が08年度総会


日本経団連のOECD諮問委員会(本田敬吉委員長)は9日、東京・大手町の経団連会館で2008年度総会を開催した。議案審議に先立って、来賓の田中伸男国際エネルギー機関(IEA)事務局長から、国際エネルギー情勢について説明を聴くとともに懇談した。田中事務局長の説明概要は次のとおり。

■ 原油価格高騰の背景は投資不足

最近の原油価格の高騰によって、1973年、79年に次ぐ「第三次オイルショック」ともいえるほどの影響が途上国をはじめ世界に出始めている。IEAでは、根本的な問題は投資が十分行われていないことにあり、その結果、中国やインドなど新興国の需要の伸びに生産が追いついていないことにあると分析している。価格が高騰しても需要が落ちないのが、今回のオイルショックの特徴である。従って、単にIEA加盟国が備蓄を取り崩して市場に放出すれば問題が解決するわけではなく、資源への適切なアクセス確保など、構造的問題の解決に向けた取り組みが必要である。1バレル30‐40ドルの水準に戻るとは思えないが、このまま200ドルまで上昇するか否かは不明である。エネルギー価格が高騰する中、投資の促進に加えて、エネルギー効率の向上、エネルギー源の多様化、市場の透明度向上、備蓄などセーフティーネットの維持が重要である。

■ CO2半減のためには発電部門の脱炭素化などが必要

近年、IEAには、地球温暖化問題への対応という面での役割が強く求められている。年率3.3%の経済成長を維持しつつ、2050年でCO2の排出量を半減するためには、省エネの一層の推進とともに、CO2の隔離・貯蔵、原子力の利用、再生可能エネルギーの利用拡大など発電部門の脱炭素化が不可欠である。具体的には、毎年32基の原発の新設、1万7750基の風力発電の新設などが必要である。IEAの試算では、これらを実現するには年間45兆ドルの追加投資が必要となる。さらに、電気自動車への切り替えなど輸送部門の革命も求められる。日本は省エネへの自主的な取り組みが相当進んでいるが、電気・ガス系統へのアクセスの確保、原発の稼動率向上のための定期検査体制の見直し、再生可能エネルギーの活用などが今後の課題として指摘できる。

■ 中国とインドのIEA早期加盟が不可欠

かつてはIEA加盟国で世界のエネルギー消費の3分の2を占めていたが、現在は2分の1に低下しており、将来的にはさらに減少する見込みである。このままではIEAとして十分な機能を発揮することは難しいことから、今後10年以内に中国、インドの加盟を実現することが不可欠と考えている。

【国際第一本部貿易投資担当】
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