日本経団連の日本ブラジル経済委員会(槍田松瑩委員長)は6月26日、東京・大手町の経団連会館で2008年度総会を開催。槍田委員長の冒頭あいさつの後、パロッシ・ブラジル下院議員(前財務大臣)からブラジル経済の動向について説明を聴いた。
パロッシ議員の説明概要は次のとおり。
日系人と日本企業は、ブラジルの国家建設に大きく貢献してきた。今年は日本人のブラジル移住100周年に当たり、6月に開催されたブラジル政府主催の記念式典出席のため、皇太子殿下がブラジルを訪問された。現地の報道機関は連日詳しく報道し、今後の両国の友好関係の促進に大きく貢献した。
ブラジル経済は、歴史的に最も長い安定成長を続けている。これは、ルーラ政権と前政権が取り組んだ財政健全化の結果であり、GDPの60%を超える財政赤字は40%を下回るところまで減少した。1994年のレアルプランの発動、99年のインフレ対策、さらには03年のルーラ大統領就任後の経済政策がインフレ抑制に大きな成果を上げてきた。食料やエネルギー価格の高騰により世界経済は強いインフレ傾向にあるが、ブラジルは07年、また直近の12カ月間においても、BRICs4カ国の中で特に低いインフレ率を誇っている。
経済安定に貢献している要素の一つは貿易収支黒字である。輸出入とも順調に推移し、増加率は以前の13〜14%程度から28〜30%に拡大している。近年、貿易黒字は若干縮小傾向だが、これは内需拡大によるもので、むしろブラジル経済の健全性を示している。
もう一つは2000億ドルを超える外貨準備であり、これは対外債務を上回っている。ブラジルは債務国から債権国に転換した。かつてのブラジルの経済危機の大きな原因は、外部要因に対する脆弱性であったが、外貨準備の改善によってこのもろさを克服したといえる。その結果、国際格付機関から投資適格グレードの認定を受けている。また、サブプライムローン問題などに左右されない健全性を保つことが可能となっている。最近数年間の経済成長率は、99〜02年の約2.1%から、04〜07年には4.5%に伸びている。
雇用状況をみると、以前は年60万人台だった正規雇用者数の創出が、150〜160万人と倍以上になっている。今年は5カ月間で100万人を超え、通年では昨年の記録を大幅に上回ると予測されている。所得向上の直接的影響は、耐久消費財の売上で、貧困地域である北東部の伸び率がブラジル全体を大きく上回っていることにも表れている。ブラジルの最も深刻な社会問題の一つは不公平な富の分配だったが、格差問題は着実に解決に向かっている。
一方、外国直接投資は07年から大幅に伸びているが、日本からの投資の占める割合は、80〜91年の平均10.8%が、92〜07年の平均2.5%に低下している。日本の存在感が低下していることがわかる。過去において、ブラジルにおける日本の存在感ははるかに大きかった。ぜひ、往時のレベルを取り戻してほしいと期待している。ブラジルは先般、デジタルテレビ放送で日本方式を採用した。これは通信方式の選択にとどまらず、両国の輝かしい経済交流の実績と、双方にとっての成功体験、かつての栄光を互いの努力によって再び取り戻したいとの期待の表れと理解してほしい。