日本経団連タイムス No.2918 (2008年8月28日)

教育振興基本計画で説明を聴き意見交換

−文科省・清水局長を招き/教育問題委員会


日本経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(三村明夫委員長、蛭田史郎共同委員長)を開催した。会合では、文部科学省の清水潔生涯学習政策局長を招き、7月1日に閣議決定された教育振興基本計画について説明を聴くとともに、意見交換を行った。

■ 清水局長説明

コスト縮減や予算の重点的効率的運用に取り組む

教育振興基本計画(以下、「計画」)は、わが国初の教育に関する基本計画である。今後10年間を通じてめざすべき教育の姿として、(1)義務教育修了までに、すべての子どもに、自立して社会で生きていく基礎を育てること(2)義務教育修了後は、社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てること――を示した。これを踏まえて、「社会全体で教育の向上に取り組む」などの4つの基本的方向に沿って、今後5年間に取り組むべき具体的な施策を示している。例えば、確かな学力を保証するという観点から、新学習指導要領の着実な実施、全国学力調査による検証などを盛り込んだ。

教育投資については、当初の原案では「OECD諸国の平均である5.0%を上回る水準をめざす」ことが盛り込まれていたが、政府部内での調整の結果、数値目標が明示できなかった。そのことは残念だが、教育投資の重要性に関する基本的な認識は政府として共有できた。今後は、毎年の概算要求を通じて、予算の確保・充実に努めていきたい。日本経団連から指摘されたように、限られた予算を最大限有効に活用するという観点から、コスト縮減や予算の重点的効率的運用に取り組むことは当然のことと考えている。PDCAサイクルを重視し、スクラップ&ビルドをしながら5年間の計画を進めていく。また、アクションプランを策定し、進捗状況を毎年度公表していく。

基本計画の実現に向け、企業も協力を

「計画」の実現のために、やるべきことはたくさんある。企業にお願いしたいことは、(1)キャリア教育、職業教育への支援(2)理科教育、外国語教育などでの人材の提供(3)有害情報から青少年を守るための協力(4)学生の採用活動早期化の是正(5)留学生の日系企業における積極的な採用、処遇の改善(6)社員の学習活動への理解と支援――などである。

■ 意見交換

意見交換では日本経団連側から、「小中高校の校長に経営者としての責任と権限を持たせるべきである」「工学部でも受験科目で物理をとらなくてもよい学校があるということだが、工学部を卒業した学生の物理、数学の基礎的な力が弱く、困っている」「専門高校の教える内容が時代に合っておらず、このままでは予算の無駄遣いではないか」「教育の情報化のグランドデザインを5年計画の中に入れてほしい」「実業界の経験者をもっと大学などで受け入れるべきだ」などの意見が出された。

【社会第一本部教育問題担当】
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