日本経団連タイムス No.2920 (2008年9月11日)

ベネズエラの経済情勢や日本との二国間関係など

−イシカワ駐日ベネズエラ大使から説明聴く/日本ベネズエラ経済委員会総会


日本経団連の日本ベネズエラ経済委員会(小島順彦委員長)は8月7日、東京・大手町の経団連会館で2008年度総会を開催した。総会では、セイコウ・ルイス・イシカワ・コバヤシ駐日ベネズエラ・ボリバル共和国特命全権大使からベネズエラの経済情勢や日本との二国間関係などについて説明を聴いた。イシカワ大使の説明概要は次のとおり。

ベネズエラは、04年から07年の4年間、平均で年率11%の経済成長を続けている。今年は第1・四半期に4.8%を記録し、年率8%の成長を予想している。セクター別では民間部門が最大の成長率を記録し、中でも金融・保険、通信、建設の成長が著しかった。適切な外貨管理により過去3年間、為替レートと金利は安定して推移し、インフレ率も抑制されている。最低賃金は見直され、現在では南米地域で最高水準に達した。世界的なインフレが高進しているが政府は社会的弱者に影響が及ばないよう努力している。カントリーリスクは02年以降低下するなど、世界各国からの信頼感が増している。国際収支も好調である。08年はエネルギー、水、インフラ整備など39のプロジェクトが計画されている。

石油・天然ガスに恵まれ、現在の石油の確認埋蔵量は890億バレルである。オリノコ川周辺には未開発の超重質油が1兆バレル単位で存在すると言われており、開発しやすくコストも低い。メキシコ湾原油の開発・生産コストは1バレル68ドルだが、ベネズエラ原油は7〜8ドルである。現在日量330万バレルを生産している。わが国は電力の70%を水力発電で賄っており、原油の国内消費量は日量50万バレルと少ないため、残りの日量280万バレルを輸出に振り向けることができる。ベネズエラは積極的な石油開発計画「センブラ・ペトロリオ」によって生産を日量580万バレルに増強する予定である。

また、天然ガスの確認埋蔵量は180兆立方フィートで新たに195兆立方フィートが存在すると考えられている。

ラテンアメリカ最大で世界第5位の石油会社であるベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の昨年の業績は好調で、売り上げは960億ドル、当期純利益は60億ドルであった。経常利益は250億ドルで、一部は社会開発に使用された。多くの日本企業が石油・天然ガス分野に参画しており、他の分野でも事業を拡大している。ビジネスチャンスは多々あると確信する。

ベネズエラでは、富の再分配を目的に多くの社会プログラムを実施している。貧困率は継続して低下している。教育予算の対GDP比率は増加しており、保健関連プログラムと合わせて効果を上げている。

08年はベネズエラと日本の修好70周年、日本人のベネズエラ移住80周年に当たり、両国は実りある関係を維持している。ベネズエラは日本とその国民に敬意を抱いていることを強調したい。

わが国の貿易は対外黒字を継続しており、ここ数年のエネルギー価格の上昇により黒字幅は拡大している。日本との二国間貿易については、06年から07年の日本の対ベネズエラ輸出が15%拡大し、日本の輸出超過額は10億ドル超と記録的なものとなった。さらにさかのぼると、04年から05年は88%、05年から06年は83%増加した。これはとりもなおさず、ベネズエラ経済の成長により需要が拡大していることによる。主な輸入品目は自動車、電気機器などであり、最近では医療機器が増えている。ベネズエラの対日輸出では、アルミや鉄鉱石などの伝統的な産品に加えて最近ではカカオが拡大している。また、07年から新たに石油が加わった。

米国との関係では、貿易額は年々拡大し、07年は500億ドルに達した。米国企業による対ベネズエラ投資も増加している。日本人の中にはベネズエラと米国との関係は衰退しているとの印象を持つ人が多いようだが実態は違う。

現在わが国は、世界各国と経済分野を含めたより良い関係を築くため、新しい政策を実施している。これにより日本企業にも多様なビジネス・チャンスが増えている。その一例がPDVSAである。10年前、同社は米国企業とのみ取引していたが、今では世界20カ国以上の企業とさまざまなプロジェクトを実施している。例えばJBIC(国際協力銀行)との13億ドルの融資契約を調印している。この資金でPDVSAは2つの精油所関連プロジェクトや港湾施設の整備など重要なプロジェクトを計画しており、これにより15年にわたり石油と石油製品を日本に供給することとなる。

また、日本の経済産業省のエネルギー協力の枠組みを活用し、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などと協力し、ベネズエラ人の石油・石化関連の技術研修を日本で行うことになり、近々調印する予定である。ベネズエラ政府にとってこうした国民への研修は重要で、この計画は最も高い評価を得ている。

また相互理解のための覚書にも調印する。新しい枠組みがつくられることで、新しいプロジェクトでのさらなる両国協力につながると思う。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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