日本経団連タイムス No.2921 (2008年9月18日)

斉藤環境相との懇談会開催

−環境と経済の両立や環境技術開発の重要性で一致


日本経団連は11日、都内のホテルで斉藤鉄夫環境大臣はじめ環境省幹部との懇談会を開催した。環境省からは斉藤大臣、吉野正芳副大臣、古川禎久大臣政務官ら35名が、日本経団連からは御手洗冨士夫会長、米倉弘昌評議員会議長、関係副会長ら21名が出席。今後の環境行政のあり方などをめぐって意見交換した。

会合の冒頭、御手洗会長は、「資源・エネルギー価格の急騰や世界経済の減速などにより、日本経済は停滞の度合いを深めているが、危機を好機に変えて新製品や技術の開発に取り組み、経済を成長させることが課題である」と指摘。環境問題に関しては、「環境立国を確立・維持していくためには、われわれ産業界が新しい技術・製品を生み出すことと、その移転・普及が重要である。日本企業の高い技術力で地球規模のCOの削減に貢献していくことこそ、わが国が世界に果たすべき重要な役割だ」と述べた。

続いてあいさつした斉藤大臣は、「環境と経済の両立や技術の重要性はまったくそのとおりであり、それらを基礎に対策を進めなければならない」と御手洗会長の考え方に基本的に賛同した。一方で、「環境税と排出量取引は、経済的手法として排出削減に欠くべからざるものと認識している」と述べ、排出量取引についても「この秋から開始する試行的実施には、日本の主要企業に軒並み入っていただき、ここで得られた知見を、日本が排出量取引の国際枠組みに合流する際に日本の主張として盛り込みたい」と述べた。

その後の懇談ではまず、日本経団連側から、温暖化対策ならびに循環型社会形成に関して、環境自主行動計画を推進し実績を挙げていることを説明。また、COの削減には革新的技術の開発や原子力発電の推進など、具体的な対策が不可欠であり、排出量取引制度や環境税を導入すれば減るというものではないと強調した。

特に国内排出量取引の試行的実施について、環境自主行動計画の推進に支障を来さないことが最も重要であること、本格導入を前提として参加するつもりはないことを明示した上で、排出量取引は欧州ではマネーゲームになっており、産業界の反対も潮流となっていると指摘。さらに、環境税の導入には、従来どおり反対であると主張した。加えて、原子力発電の設備利用率向上の必要性にも触れた。

これらの意見に対し、斉藤大臣からまず、原子力は当然重要であり、原子燃料サイクルの実現を含め原子力発電を積極的に推進すべきとの力強い発言があった。また、排出量取引の試行実施に関しては、自主行動計画と矛盾するものにするつもりはないこと、本格導入を前提としないとの内閣官房の方針は承知しており、環境省もその範囲内で考えていること、マネーゲームにならないようにすることは重要であるといった発言があった。さらに、道路特定財源の一般財源化の中で、環境税が一つのポイントになるのではないかとのコメントがあった。加えて、低濃度PCB問題についても、合理的な処理ができるよう対応したいと述べた。

最後に、御手洗会長が、「本日の会合では、両者の考えが一致しているところとそうでないところが明らかになったことに意義があった」と述べた。

【産業第三本部環境担当】
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