日本経団連タイムス No.2923 (2008年10月2日)

国際会計基準を取り巻く現状を聴く

−国際会計基準審議会(IASB)トウィーディー議長が講演
/グローバルな会計基準の必要性など


日本経団連は9月24日、国際会計基準(IFRS)を策定している国際会計基準審議会(IASB)のトウィーディー議長を東京・大手町の経団連会館に招き、講演会を開催した。

IFRSは現在、EU諸国をはじめ世界約100カ国で採用または採用が予定されており、今年8月には、米国の証券取引委員会(SEC)が米国の国内企業にも順次IFRSを義務付ける方向を示したことで、世界の主要な証券市場は、ほぼIFRSに統一され、名実ともにグローバル・スタンダードとなる。これらの状況を受け、日本経団連でも、会計基準の国際的な統一化への対応について検討を進めており、さらなる広報や説明の一貫として今回の会合が開催された。トウィーディー議長の説明概要は次のとおり。

1.グローバルな会計基準の必要性

資本市場のグローバリゼーションの中、会計基準が統一化されることで、外国投資家に対するローカル市場の信頼性向上、国境を越えた投資活動の促進、比較可能性の向上などの利点が得られる。また、企業にとっては、企業グループ内で統一の会計基準を使うことによって、ITシステムが統合され、「一組の帳簿」で管理が行えるようになり、さらに、世界中の投資家に対して同一の財務諸表を開示することで、さまざまな国での資本調達が可能になるなど、メリットが大きい。IFRSは既に世界113カ国で使用されており、世界はますます小さくなってきている。

2.IFRSと米国の状況

EUが域内市場の統一基準としてIFRSを使用することを決定して以来、IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)は、IFRSと米国会計基準の間に存在する差異を解消することを目的とした作業に共同で取り組んでいる。2006年に公表されたロードマップでは、作業を短期と中期に分けており、現在も、計画表に沿って、作業が行われている(08年9月、IASBとFASBはロードマップの更新を公表した)。

その結果、07年、SECは米国に上場する外国企業に対し、IFRSと米国基準に関する差異調整表の提出を求めないことを決定した。さらに、米国は、今年8月に一部の米国国内企業に対し、09年からIFRSの使用を容認し、14年から順次IFRSの使用を義務付けていくとの考えを公表した。

3.IFRSの特徴

IFRSは規則が詳細で膨大な米国基準とは異なり、原則主義を採っている。原則主義の会計基準は、例外がない、矛盾がない、同じ判断が導かれる、最小限の適用指針しかない等の特徴がある。現に、現在の米国基準が2万5000ページにも及ぶものであるのに対し、IFRSはわずか2500ページしかない。果たしてそのような原則主義が機能するのか、と関係者からは多くの疑問が投げかけられるが、本来、会計基準というものは、テクニカル部門の判断を仰がなければ判断できないようなものではなく、経営者や監査人が自ら判断できなければならないものだと思っている。

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日本経団連では、IFRSの世界的な普及と米国の動向を踏まえ、会計基準の国際的な統一化へのわが国の対応につき、早急に考え方を取りまとめ、内外に働きかけていく予定。

【経済第二本部税制・会計担当】
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