日本経団連タイムス No.2924 (2008年10月9日)

税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言公表

−安心で活力ある経済社会実現に向けて具体策提起


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は2日、「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言」を取りまとめ公表した。同提言の概要は次のとおり。

<わが国を取り巻く環境変化と課題>

わが国の社会保障制度は、さまざまな綻びや不備、非効率が生じており、少子・高齢化の中でも中長期的な持続可能性を高めていくため、抜本的な改革が急がれる。同時に、国力・国富を左右する重要な課題である少子化問題に対し国として戦略的に取り組み、早く人口減少傾向に少しでも歯止めをかける必要がある。一方で、世界最悪の財政状態を健全化させ、中長期的には、財政収支を黒字化し、債務残高の絶対額の増加に歯止めをかけなくてはならない。

<税・財政・社会保障制度の一体改革の具体策>

(1)経済活性化、社会保障制度の機能強化、少子化対策(2009年度)

現在2008年度中の実現をめざす政府の緊急総合対策に加え、2009年度においては、まず、現下の経済情勢を打破し、一刻も早く景気を回復軌道に戻す政策を総動員させねばならない。内需拡大の刺激策として、今年末で期限を迎える住宅ローン減税の拡充や省エネ投資促進税制などの税制措置などを講ずるべきである(「平成21年度税制改正に関する提言」 9月18日号既報)。
社会保障制度においては、徹底した無駄の排除、歳出削減や特別会計の剰余金(いわゆる埋蔵金)の活用により、基礎年金の国庫負担割合の引き上げを予定どおり行うべきである。同時に、医療・介護分野への緊急対応にも重点的に公費を投入する必要がある。また、中低所得層の子育て世代に減税となるように集中的な支援を行うべきである。

(2)大胆な所得税減税と消費税率引き上げの一体的な実施(2010年度、2011年度)

2010年度、遅くとも2011年度までに、消費税率の引き上げと、中低所得者層の負担緩和に向けた所得税減税を一体的に実施すべきである。社会保障財源や少子化対策所得税減税などを考えれば最低で5%の引き上げは必要となろう。その際、中低所得者層(おおむね年収500万円以下の世帯)に対しては、5年程度を期限として消費税率1%相当程度の規模の大胆な定額減税(例えば、世帯当たり10万円程度)を行うべきである。
また、極力品目を限定しつつ、基礎的な食料品等に関しては軽減税率(現行の税率5%を維持)の適用も検討すれば消費税引き上げによる中低所得者層への負担拡大は、ほぼ解消できる。

(3)国際的整合性を踏まえた法人実効税率の引き下げ

世界各国では、自国企業の競争力強化や企業立地促進のために法人税の引き下げ競争が繰り広げられている。企業活動の活性化は、雇用や所得、配当の増大を通じて日本経済全体の成長力向上に資するものである。国際的整合性を踏まえた法人実効税率の引き下げについても、税制抜本改革の中で実現していくべきである。

◇◇◇

日本経団連では、産業界の意見が反映されるよう、引き続き積極的な働きかけを行っていく予定である。

【経済第二本部税制・会計担当】
Copyright © Nippon Keidanren