日本経団連タイムス No.2925 (2008年10月16日)

提言「人口減少に対応した経済社会のあり方」公表

−経済社会の活力維持へ、中長期的な政策を提示


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は14日、提言「人口減少に対応した経済社会のあり方」を取りまとめ、公表した。同提言は、今後50年程度を視野に、本格的な人口減少社会が到来する中にあっても、活力ある、豊かな国民生活を維持していくために、今から着手すべき施策を取りまとめたものである。取りまとめにあたっては、ドイツ、イギリス等、欧州4カ国とEUについて現地調査も行った。
同提言の概要は、次のとおり。

■ 人口減少が経済社会に及ぼす影響と早期対策の必要性

今後50年で、わが国の総人口は8993万人(2055年)となって30%近く減少し、経済の主たる担い手である生産年齢人口は4595万人と、現在のほぼ半分の水準となる。このような状況は、高齢者1人に対して、わずか1.3人の現役世代で支えなければならないということを意味している。

こうした急速な人口減少により、経済成長は押し下げられ、財政・年金制度は持続困難となるばかりでなく、医療や介護といった人手を要する経済社会システムを維持していくことも難しくなる。一定の仮定の下で試算すると、医療・介護分野では、約180万人の人材不足が発生する。

一方、人口減少の影響は、時間の経過とともに、深刻度が増していく。そこで、即効性のある対策とともに、比較的長い時間を要する対策にも、同時並行で直ちに着手する必要がある。

■ 中長期的な経済社会の活力維持に向けた方策の実現

このような観点から、同提言では、3つの柱からなる政策提言を行った。

第一は、成長力の強化である。労働力人口の減少をはねのけて、成長を続けられる力強い経済を構築していく必要がある。そのためには、(1)研究開発活動の促進(2)イノベーションを担う人材の育成と海外からの招聘(3)各国とのEPA(経済連携協定)/FTA(自由貿易協定)の締結促進を通じた世界の成長力の取り込み(4)地域活性化と道州制の導入――が求められる。

第二は、未来世代の育成である。人口減少そのものを正面から食い止める努力として、抜本的な少子化対策を推進し、出生率を反転、上昇させていかなければならない。そのための財源は、税・財政・社会保障制度の一体改革の中で確保していく必要がある。同時に、公教育の再生が不可欠である。

第三は、経済社会システムの維持に必要な人材の活用と確保である。人口減少が本格的に進む中で、その機能を安定的に維持していくためには、国内の労働力を最大限活用することに加えて、海外から相当規模の人材の受け入れと定住化を図っていくことは避けては通れない。

わが国としても、全世界的に人材獲得競争が激しくなる中、高度人材の積極的な受け入れや、留学生の受け入れ拡大と就業促進といった取り組みに加え、今後は、一定の資格や技能を有する外国人材を積極的に受け入れていく必要がある。そのためには、法制面の整備や、担当大臣の設置を含む行政面での体制整備など、「日本型移民政策」の本格的な検討が待ったなしの課題であり、国民的なコンセンサスの形成に向けた議論を早期に開始することが求められる。

【経済第一本部経済政策担当】
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