日本経団連タイムス No.2925 (2008年10月16日)

ロードメイヤー・オブ・シティ・オブ・ロンドンのデービッド・ルイス氏と懇談

−日本は金融危機の解決に主導的役割を


日本経団連は9日、東京・大手町の経団連会館で、ロンドンの金融街シティで働く人々により選出される英国の金融サービスの大使であるロードメイヤー・オブ・シティ・オブ・ロンドンのデービッド・ルイス氏との昼食懇談会を開催、日本経団連からは、小林喜光ヨーロッパ地域委員会共同委員長らが出席した。
ロードメイヤーの発言要旨は次のとおり。

■ グローバルな金融危機にはグローバルな対処が必要

米国のサブプライムローン問題に端を発する金融危機が、ハリケーンのように欧州を直撃した。これまでの米英当局の対応は賞賛に値するが、まだ先は長い。政府、中央銀行、金融規制当局、それぞれの間の緊密な協力、銀行間の信用・信頼の回復による流動性の確保、中小企業への融資拡充が必要である。また、今後は大手金融機関による中小の買収が進み、整理・統合が加速するであろう。

米国では市場からの退場を宣告された金融機関が出てしまったが、欧州では破綻は許されないし、預金者が預金を失うこともない。首脳からもそのような共同声明が発信されている。この米欧に日を加えた三極間の協調が重要である。

■ 世界の金融センターとしてのロンドンは今後も健在

このような中、英国経済も成長が横ばいとなり、次の四半期の状況次第では景気後退に入るかもしれない。現在4.5%のインフレ率が下降に転じるのは5%まで上昇した後ではないかと思われる。来年初めにさらに状況が悪化し、その後の回復には1年程度を要するというのが大方の予測である。

危機に遭遇しても、世界の金融センターとしてのロンドンの地位は揺らぐことはない。ロンドンがこれまで成功を収めてきた理由は、国際的に開かれていたことにある。そこでは、300の言語が話され、英国のパスポートを持たない人が20万人も働いており、建物の半分を外国人投資家が所有、そこに居を構える企業の半分も外資である。外国人、外国からの投資は歓迎しており、この姿勢、方針は変わらない。また、英国政府としても、金融システムの安定のために必要な措置はすべて講じる用意がある。割安な投資機会も存在する。

幸いロンドンはレバレッジ商品への依存度が比較的少ない上に、銀行、保険、海運、不動産、法律、会計と幅広い産業を有し、また、外国為替取引の34%、外国株式取引の46%、ユーロ債取引の70%、金属取引の90%が行われている。この裾野の広さこそがロンドンの強みである。

■ 日英経済関係の拡大と東京の国際金融センターとしての発展を期待

日英修好通商条約締結150周年に当たる今年、日本を訪問できてうれしい。日本は英国において主要な投資国の一つであり、多数の日本企業が英国に進出、欧州本社を置いている企業も多い。二国間貿易は300億米ドルに上り、さらなる拡大が期待される。

世界が混乱に見舞われている今こそ、かつて危機を克服した経験を持つ日本が主導的な役割を果たすべきであり、また、金融サービスの拡充に努めることによって東京を世界の金融センターに発展させるべきである。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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