日本経団連タイムス No.2926 (2008年10月23日)

21世紀政策研究所が第57回シンポジウム

−IT革新がわが国産業や経済に与える影響を議論


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は6日、第57回シンポジウム「IT革新の日本産業への影響と経済政策のあり方―何故日本の3%〜4%の経済成長率は可能なのか」を東京・大手町の経団連会館で開催し、IT革新による生産性向上が日本経済の成長力に与える影響について、議論を深めた。シンポジウムでは、宮原理事長の主催者代表あいさつに続いて、同研究所の熊坂侑三研究主幹(ITeconomy Advisors 代表取締役)が研究報告を行い、その後パネルディスカッションが行われた。当日は、日本経団連の会員企業・団体など約100名が参加、学会や実際の政策実務の最前線で活躍する講師・パネリストの説明に熱心に耳を傾けていた。

冒頭のあいさつで、宮原理事長は、「今回の研究は、日本経済の成長力をどう高めるかということに焦点を当て、経済成長におけるITの可能性を検証した。経済成長をめぐる政策論議活性化の一助になることを期待する」と述べた。

続いて、熊坂研究主幹が、「何故日本の3〜4%経済成長は可能か―上げ潮政策の実証分析」と題して報告を行った。同氏はまず、「1〜2%の経済成長では必ずだれかしら取り残される。だれもが良くなるためには最低3%の成長が必要」と上げ潮政策の基本的な考え方を示した上で、90年代後半の米国で見られたように、日本もIT革新による生産性の向上を通じて、潜在成長率を高める必要があると述べた。さらに、IT革新の影響は産業間で大きく異なり、特に電気機械、輸送機械、金融・保険・不動産、通信業などは5%以上の経済成長が可能との分析結果を披露した。その上で、経営者のITへの理解向上と経営への応用、さらに、IT革新を十分に活かすことができるような企業組織への変革などの重要性を強調した。

引き続き行われたパネルディスカッションでは、熊坂研究主幹がモデレーターを務め、パネリストとして、ジェラルド・F・アダムス・ペンシルバニア大学名誉教授、篠崎彰彦・九州大学大学院経済学研究院教授、今川拓郎・総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課情報通信経済室長の3氏が参加した。

アダムス教授は、マクロ経済政策、貿易為替政策、産業政策等について、アメリカの経験に基づいた日本の成長戦略を提言した。

篠崎教授は、ITと経済・産業分析の専門家の立場から、情報化だけでなく、業務・組織改革への取り組みと、人的資源への教育投資(人材対応)の相乗効果が生産性を一段と押し上げることを、定量的な分析に基づいて説明した。

今川氏は、実際にIT政策を担っている立場から、現在政府が推進しているIT戦略や情報化社会の将来ビジョン、ITによる成長プランなどについて解説した。

Copyright © Nippon Keidanren