日本経団連タイムス No.2927 (2008年10月30日)

「わが国財政の現状と課題」

−丹呉・財務省主計局長が説明/財政制度委員会


緊急総合対策など

日本経団連の財政制度委員会(氏家純一委員長、秦喜秋共同委員長)は20日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、財務省の丹呉泰健主計局長から、「わが国財政の現状と課題」について説明を聴いた。丹呉主計局長からの説明概要は以下のとおり。

わが国の財政は、国・地方の長期債務残高対GDP比が148%(2008年度末)に達する見込みと、国際的にみても危機的な状況にある。マーケットの信認を確保していくためにも、財政健全化に取り組むことは極めて重要である。しかし、今年に入ってから、国際的な金融市場の不安定化や世界経済の減速の影響を受けて、わが国経済も大変厳しい状況に直面しており、財政としてどう対応するかが問われている。「当面は景気対策、中期的には財政健全化」の方針で取り組むこととしたい。

■ 緊急総合対策と第一次補正予算

8月末に、原油高・物価高への対応を中心とする「安心実現のための緊急総合対策」を取りまとめ、これを裏付ける第一次補正予算が10月16日に成立した。補正予算では、中小企業が新しい価格体系への移行に対応できるようにするための支援策、将来の経済活性化に資する分野への支出を基本とする一方で、財政規律を堅持するため、財源は不用額の充当、経費の切り詰め等によることとし、赤字国債の発行を回避した。

■ 新しい経済対策の策定

しかし、9月のいわゆるリーマンショック以降、国際金融市場が大きく動揺し、世界的に実体経済の悪化が深刻になった。こうした事態に対して、麻生首相は補正予算成立の直後に「新しい経済対策」の策定を指示し、10月中に政府・与党としての取りまとめが行われる予定である。先行して株式市場対策や金融機能強化法の復活等の金融安定化策が進められているが、新たな景気対策では、定額減税、設備投資減税、住宅ローン減税、証券税制、企業の海外所得の国内還流策といった歳入面での対策も検討されている。

■ 平成21年度予算編成のポイント

第一に、厳しい経済情勢への対応が求められる。第二に、中期の税制改革のプログラムを取りまとめることで、国民やマーケットに対して財政健全化への道筋を示していく必要がある。予算編成上の個別論点としては、道路特定財源の一般財源化と基礎年金国庫負担割合引き上げの財源確保が大きな課題である。前者については、何が必要な道路であるかの見極めが重要である。道路整備に関する信憑性のあるデータを積極的に公開する必要がある。揮発油税については、諸外国に比べ税率が低く、また、厳しい国・地方の財政事情を考えると税率の引き下げは難しい。生活道路を整備していくための財源をいかに確保していくかが課題である。

04年の年金改正で基礎年金国庫負担割合を2分の1へ引き上げることが法定されており、そのために約2・3兆円の財源が必要となる。現在の経済状況では直ちに国民に負担増を求めるわけにはいかないため、中期の税制改革プログラムの中で道筋を示す必要がある。それまでの間のつなぎ財源確保策が検討されている。特別会計の積立金・剰余金は一時的な財源手当てにしかならず、恒久的な財源にはならない点に注意しなければならない。

【経済第一本部経済政策担当】
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