日本経団連タイムス No.2929 (2008年11月20日)

わが国における抜本的な税制改革のあり方を議論

−21世紀政策研究所がシンポジウム


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は10月29日、第59回シンポジウム「抜本的税制改革〜安心社会の建設と経済活性化の両立を」を東京・大手町の経団連会館で開催した。また、今回のシンポジウムテーマとなった提言を21世紀政策研究所のホームページ(URL=http://www.21ppi.org/)に公開し、わが国における抜本的税制改革のあり方について、広く議論を提起している。シンポジウムでは、宮原理事長の主催者代表あいさつの後、同研究所の森信茂樹研究主幹(中央大学法科大学院教授)が研究報告を行った。その後、大田弘子前経済財政政策担当大臣(政策研究大学院大学教授)らを交えたパネルディスカッションが行われた。当日は、日本経団連の会員企業・団体を中心に約160名が参加し、税制改革論議の最前線で活躍する講師・パネリストの説明に熱心に耳を傾けていた。

あいさつにおいて、宮原理事長はまず、「税、財政、社会保障を抜本的・一体的に見直すことで、活力ある経済社会をめざす必要がある」と述べた。その上で、「抜本的税制改革の中心テーマである消費税の役割拡大や、国際的整合性を踏まえた法人実効税率の引き下げなどについて、丁寧に国民的な議論を喚起していく必要がある」ことを強調した。

続いて、森信研究主幹が研究報告を行った。森信氏は、「『歳出削減』と『税負担の増加』は白か黒かではなく、物事の表裏である」とした上で、「『望ましい税制』の議論と、『政府の規模』の議論もまた表裏一体の関係である」と述べた。さらに、消費税率の引き上げで負担が重くなる低所得層に対しては、給付付き税額控除で対応するのが望ましいとした。また法人税改革については、ドイツの税制改革を引き合いに出しながら、日本企業の国際競争力確保ではなく、日本の「企業立地」の国際的競争力向上の観点から、法人実効税率引き下げの必要性を強調した。

パネルディスカッションは、「安心社会の建設と経済活性化の両立を」をテーマに、森信研究主幹がモデレーターを務め、パネリストとして、大田前大臣、田近栄治一橋大学大学院教授、佐藤主光一橋大学大学院准教授、土居丈朗慶應義塾大学准教授、阿部泰久日本経団連経済第二本部長が参加して行われた。大田前大臣は、包括的な税制改革に向けた課題や、分析に基づいた税制改革論議の必要性等に言及した。土居准教授からは消費税率の役割拡大の重要性、佐藤准教授からは地方法人税と地方消費税の一体改革の必要性、田近教授からは税と社会保険料の一体的調整について説明があった。また、阿部本部長は経済界の立場から、課税ベースの拡大に踏み込まない、ネットでの法人税減税の必要性を説いた。

その後、法人税改革や、給付付き税額控除等について、より踏み込んだ討論が行われ、税制抜本改革の必要性について理解を深めた。

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