日本経団連タイムス No.2929 (2008年11月20日)

公的部門の「生産性」向上策探る

−21世紀政策研究所がシンポジウム


日本経団連の21世紀政策研究所は10月21日、東京・大手町の経団連会館で、第58回シンポジウム「公的部門の『生産性』向上策〜行政を『見える化』する」を開催した。また、同日、報告書「公的部門の生産性向上策―公営住宅の事例をてがかりに」を発表し、ストックに着目した行政改革の必要性について広く議論を提起している。

宮原賢次理事長の開会あいさつに続き、上山信一同研究所研究主幹(慶應義塾大学教授)の進行で、第1部では自治体においてフローの視点から生産性向上に取り組んだ事例を池末浩規パブリックパートナーズ代表が紹介した。第2部では、公営住宅の事例について辻垣卓也主任研究員が説明した後、上山研究主幹がストックの視点から生産性向上策を示した。当日は、日本経団連の会員企業・団体、自治体関係者など約120名が参加し、議論に熱心に耳を傾けた。

あいさつで宮原理事長は、「わが国には830兆円を超える債務が存在し、今後も社会保障費の増大が見込まれる中で、行政改革の推進はますます重要である」と述べた。続いて、上山研究主幹がプロジェクトの趣旨とアプローチについて報告を行った。上山氏は、「従来の行政改革は『削る』と『束ねる』をキーワードに、予算の削減や市町村改革を進めてきた」とし、「行政のフローの改革はこの10年でそれなりに進んだが、ストックの方はまだまだ議論されていない」と述べ、生産性をキーワードに具体的な国・自治体の事業分析を進めていくことの重要性を訴えた。

続いて、池末氏は、「公的部門には、変化への抵抗、単年度主義、ストックの軽視といった特質があり、あくまで市民の代理として行政のアウトカムを最大化するという姿勢が大切である」ことを説いた。

第2部では、公営住宅事業の生産性分析について、報告、議論が行われ、コメンテーターの田中一昭拓殖大学名誉教授は、「制度をつくったときから状況が変わっている。地域が主体となって改革を始める必要がある」とコメントした。

Copyright © Nippon Keidanren