日本経団連タイムス No.2930 (2008年11月27日)

北陸地方経済懇談会を金沢で開催

−「民間と地域の活力を引き出し、逆境を飛躍の好機に変える」をテーマに


日本経団連、北陸経済連合会(北経連、新木富士雄会長)は19日、金沢市内のホテルで第35回北陸地方経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗冨士夫会長、渡文明副会長、森田富治郎副会長、槍田松瑩副会長、榊原定征副会長、古川一夫副会長、大橋洋治副会長、岩沙弘道副会長、清水正孝副会長が、北経連は新木会長をはじめ会員約120名が参加、「民間と地域の活力を引き出し、逆境を飛躍の好機に変える」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした北経連の新木会長は、「逆境の今こそ北陸のモノづくり基盤、豊かな観光資源など地域の強みに焦点を当て、地道な取り組みを続けていくべき」と述べるとともに、環日本海ゲートウェイ機能の効果を倍増させる北陸新幹線の延伸に理解と協力を求めた。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、いかなる環境の下でも、自らの力で発展・成長が可能な足腰の強い経済をつくることが必要と指摘。その上で持続可能な社会保障制度と経済の成長力強化の両立の観点から、税体系の抜本的見直しが不可欠であると強調した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では日本経団連側から、渡副会長が「良質な住宅に対する住宅投資減税導入の取り組み」、榊原副会長が「地域の固有資源を活用した成長力底上げの観点からの、市町村や都道府県の枠を越えた広域的連携の推進の取り組み」、岩沙副会長が「集中受付月間を通じた規制改革要望に対する実現への取り組み」などについて説明した。

一方、北経連側からは、まず山崎幸雄常任理事が人流・物流の結節点“北陸”の構築に向けた取り組みを報告。(1)北陸新幹線の全線開通により環境特性に優れた高速交通の環状ネットワークを形成(2)空港、港湾等拠点施設の機能強化や施設間を結ぶ鉄道、高速道路網の整備が必要(3)「北陸・韓国経済交流会議」を開催、物流、観光分野での連携拡大への協力で一致――などと説明した。

次に深山彬副会長が新産業の創出と人材交流の推進について報告。2000年に発足した「北陸STCサロン」が、新技術に結び付くようなシーズやアイデアの発表、情報交換に活用されていること、中小企業基盤整備機構との連携により、中小企業の事業承継や人材育成への支援を実施していることなどを説明した。

続いて永原功副会長が定住・交流人口の拡大に向けた取り組みについて報告。北陸への定住促進を目的としたキャンペーンを北陸3県と協働で展開、団塊世代と子育て世代向けに自治体・NPO実施の交流体験プログラム、住まいや仕事探し、子育て支援などの情報をWeb上で発信していると紹介した。

また、犬島伸一郎副会長は「地方分権型社会システムの構築」に関して、(1)分権改革が地方の切り捨てにならないこ(2)道州制の導入にあたっては、地方自治体が参加して検討が進められること――が重要と指摘した。

■ 自由討議

第2部の自由討議では北経連側から、(1)社会全体として「自助、共助、公助」のあり方を検討し、社会保障制度全般を再構築すべき(2)環日本海諸国や東アジアとの経済交流促進の観点からEPAを促進するとともに、シームレスな物流連携等に戦略的に取り組むべき(3)民間による環境性能に優れた新製品やシステムの開発等への積極的な支援が必要(4)行政手続きの簡素化、効率化によるコスト削減に加え、行政の透明性確保の観点から、電子行政を迅速かつ着実に実現すべき(5)観光振興は地域づくりと一体であり、地域の魅力発掘に加え、広域的な連携が大切(6)道州制に関して、国と地方の役割分担や財源の問題とともに、道州の区割りに自治体や住民の意向を反映することが重要――などの意見があった。

これに対し日本経団連側が、(1)中長期的には中福祉・中負担型国家と、消費・所得・資産のバランスの取れた税体系構築をめざす。改革の道筋を示すことが国民の不安払拭に不可欠(森田副会長)(2)北東アジアの国際物流拠点とすべく、貿易諸手続きの改革に引き続き取り組む(槍田副会長)(3)経済成長とCO2削減を両立するには、研究開発投資の拡大、途上国への既存技術の普及に加え、ライフスタイルや社会システムの変革が必要(清水副会長)(4)電子行政推進の法的環境を整備し、電子行政実現の推進力にしたい(古川副会長)(5)各省庁の観光政策推進、広域観光の促進、日中韓の連携強化という点で観光庁が果たす役割は大きい(岩沙副会長)(6)道州制導入による行財政改革で生み出される新たな財源を元に、道州が地域経営を実践すれば住民にメリットをもたらす(大橋副会長)――と発言した。

◇◇◇

懇談会に先立ち日本経団連首脳は、複合加工機の分野で世界を牽引する工作機械メーカーの中村留精密工業(本社=石川県白山市)を視察するとともに、技能を有する人材の育成について中村健一同社社長と意見交換を行った。

【総務本部総務担当】
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