日本経団連タイムス No.2930 (2008年11月27日)

中国の宇宙開発利用で説明聴く

−未来工学研究所の光盛主任研究員に/宇宙開発利用推進委員会宇宙利用部会


日本経団連の宇宙開発利用推進委員会宇宙利用部会(山下守部会長)は11日に会合を開催し、未来工学研究所技術・国際関係研究センターの光盛史郎主任研究員から、中国の宇宙開発利用について説明を聴いた。概要は以下のとおり。

1.中国の宇宙開発利用の背景と目的

中国は、「両弾一星」「科学技術は『第一の生産力』」「科教興国」という3つの代表的スローガンの下、科学技術政策全般を推進してきたが、1986年に策定された「863ハイテク研究発展計画」において、宇宙を重点8分野に位置付けたころから、本格的に宇宙開発利用を推進してきた。
中国の宇宙開発利用の目的は何よりも、国家的利益を守り、総合国力を増強することにあり、そのために宇宙開発利用を国家戦略として明確に位置付け、政府がその発展を全面的に支援している。

2.中国の宇宙開発利用推進体制

宇宙分野で対外的に中国を代表するのは国家航天局であるが、組織的には工業・情報化部の中にある国防科学技術工業局が上位である。ただし、軍事宇宙活動、射場管理、追跡管制、有人宇宙飛行計画等については人民解放軍総装備部が管轄している。また、今年末までに、アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)を正式に発足させ、事務局を北京に置くことが表明されている。

3.中国の主要な宇宙開発利用計画

90年の湾岸戦争で宇宙システムの重要性を認識した中国は、重要な科学技術プロジェクトを組織・実施してハイテク産業の飛躍的な発展を促進し、国防科学技術全体の著しい発展を実現してきた。その中で宇宙については、大きく分けて10年後と20年後の短期・長期の開発目標を設定し、あらゆる分野を網羅して着実に取り組みを進めている。とりわけ有人宇宙飛行と月探査には力を入れており、総合国力向上のため、戦略的に推進している。

4.中国の宇宙外交戦略

中国は、(1)宇宙の平和的利用・開発(2)平等、相互利益、相互補完、共同発展を原則とし、国際法に基づいて行う(3)発展途上国の宇宙開発能力の向上(4)宇宙環境および宇宙資源の保護(5)国連宇宙局の機能強化――を国際協力の原則とし、欧州やロシアといった宇宙先進国のみならず、アジア・アフリカ諸国やブラジルとの協力を積極的に推進している。その結果、高度な技術を蓄積するとともに、国際的な存在感を増すことにも成功している。中でも、豊富な資源を有するアフリカや太平洋諸国との協力を熱心に進め、エネルギー安全保障につなげていることが注目されている。

■ 懇談

続いて出席者と光盛主任研究員との間で懇談が行われた。日本経団連側から、中国の技術力のバックグラウンドについて質問したところ、光盛主任研究員からは、当初はロシアの技術を導入したものの、ロシアとの関係が悪化したため、自主技術の開発を進めるとともに、比較優位を持っている国から、それぞれ技術の導入に努めたとの回答があった。
また、ロケットのコスト構成に関する質問に対しては、中国はプロジェクト・ベースで事業を行っており、担当者ですら正確な数値を把握していないとの回答があった。

【産業第二本部宇宙担当】
Copyright © Nippon Keidanren