日本経団連タイムス No.2931 (2008年12月4日)

パチャウリ・エネルギー資源研究所所長(IPCC議長)と懇談

−インド政府発表の「気候変動対策行動計画」で説明を聴く


IPCC第4次報告書の概要も

日本経団連は11月21日、東京・大手町の経団連会館でインドのエネルギー資源研究所長で気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長のラジェンドラ・パチャウリ氏との懇談会を開催した。当日は、パチャウリ氏から、今年6月30日にインド政府が発表した「気候変動対策行動計画」のほか、IPCC第4次報告書の概要について説明を聴き、意見交換を行った。パチャウリ氏の発言は以下のとおり。

1.インド政府「気候変動対策行動計画」について

インドは従来、地球温暖化の責任は先進国にあるという立場をとってきたが、今では、もはや傍観者ではいられないという認識を持っている。しかし、米国は京都議定書を批准しておらず、また、目標が甘い国、目標を達成できない国が数多く存在する。途上国には、「先進国の取り組みが不十分なものを、途上国にしわ寄せしている」という声があり、インドとしても、環境と経済成長の両立を妨げるような目標にはコミットできない。なお、インドと中国に大きな違いがある。インドの1人当たり排出量は年間1.1トンであり、中国よりはるかに少ない。また、インドでは4億人が未電化地域に生活している。

6月30日にインド政府が発表した「気候変動対策行動計画」は、排出削減と貧困撲滅の両立をめざしている。行動計画は8つのアクションプランからなるが、このうち、特に以下の点については日印間の技術協力の余地が大きく、日本の産業界にとってもビジネスチャンスとなり得る。

まず、太陽光発電である。行動計画は2020年に向け太陽光発電を普及させていくとしており、私からもシン首相に対し、積極的に取り組むよう進言している。現在、米国の研究機関と共に5000〜1万メガワットクラスの太陽光発電所の建設計画を検討している。

次にエネルギー効率の向上である。行動計画は2012年までにエネルギー効率の向上を通じて1万メガワット分の省エネを図ることを目標としており、日本の技術を活用したい。エネルギー効率に関する目標の設定は重要な要素であり、インドが何らかの形で目標を設定することはあり得る。現在、行動計画を実施すべく、産業セクターごとにエネルギー効率に関する調査を行っているところである。エネルギー効率の向上は企業自身のためになるので、圧力によるのではなく、自ら目標を設定することが重要である。

2.IPCC第4次報告書について

IPCC第4次報告書は、産業革命前からの世界平均気温の上昇を2℃以内に抑えるためには、温室効果ガス濃度を450ppmに安定化させる必要があるとしている。しかし、これはあくまでも科学的分析の結果に基づく一つのシナリオに過ぎず、これを提唱しているわけではない。温室効果ガス濃度を450ppmに安定させるかどうかは交渉を通じて各国が決めることである。

【産業第三本部環境担当】
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