日本経団連タイムス No.2932 (2008年12月15日)

社会保障国民会議最終報告の内容めぐり懇談

−社会保障委員会企画部会


日本経団連の社会保障委員会企画部会(渡邉光一郎部会長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授から、11月4日に公表された社会保障国民会議の最終報告、特に医療・介護費用シミュレーション結果を中心に、その実現可能性や今後の施策のあり方などについて、説明を聴くとともに懇談した。

川渕教授はまず、社会保障国民会議が示した、医療・介護費用シミュレーション結果について、「医療・介護のあるべきサービスの姿を見据えた上で行ったもので、従来にはない形での推計である。負担増が避けられないことを示すとともに、2025年時点で必要となる財源の規模を試算した点は評価できる」と述べた。

一方、「医療・介護のあるべき姿、めざすべき姿が、病院の在院日数の短縮や病床数の削減などとされており、必ずしも十分とは言えないのではないか。医科・歯科などセクター別に推計するとともに、地域別最適モデルを構築するということで、ミクロの視点から積み上げてマクロの数値を算出するなど、もう一歩工夫が必要だったのではないか」と説明した。

また、望ましい医療・介護分野の方向性ということでは、まず「負担増の前提として、医療の質の向上と効率化を同時に達成する仕組みを構築することが求められている。この点が進まなければ、保険料・公費をより多く充てていくにしても、国民は納得しないのではないか」と指摘。その上で、「『医療の見える化』が喫緊の課題である。1400を超える病院のDPCデータということで、多くの患者のデータが厚生労働省に提出されている。これらデータを分析することにより『見える化』を進めることで、医療費、治癒率、入院日数などのミクロでの実態が見えるようになる」と説明し、データ等を分析することにより、わが国医療の実態をきちんと把握することが、今後の施策を実行する上で重要であるとの認識を示した。

また、「地域連携、急性期と慢性期の連携、在宅と施設の連携などにより継ぎ目のない医療を提供するという考え方もあり得るが、むしろ保健・医療・介護を一体とした施設完結型の方が、実効が上がるのではないか。そのほか診療報酬体系を、努力する人が報われる体系とする、レセプトをデジタル方式にするといった取り組みも重要である」など、今後必要な施策等についても指摘した。

【経済第三本部社会保障担当】
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