日本経団連タイムス No.2932 (2008年12月15日)

「中国労働法制の動向と企業の対応」テーマにNICCが視察団を派遣

−政・労・使の責任者と率直に意見交換


日本経団連の関連組織である日本経団連国際協力センター(NICC、御手洗冨士夫理事長)は、11月9日から15日の間、「変化する中国労働法制の動向と企業の対応」をテーマとする視察団を現地に派遣した。中国では、今年1月から「労働契約法」「就業促進法」が施行されたのをはじめ、5月には「労働紛争調停仲裁法」が施行され、9月には「労働契約法実施条例(細則)」が公布されるなど、労働法制が大きく変化しつつあり、中国で事業展開する企業の人事労務管理に大きな影響を及ぼすことが予想されている。

今回の視察では、現地日系企業の訪問に加えて、NICCの国際協力活動に関する中国側の提携組織であるCEC(中国企業連合会)の全面的な協力を得て、北京および広州の2都市において、中国政府機関、労働組合、中国企業等を訪問先に組み込んだ。一連の法律施行の背景やねらい、企業側の対応状況、今後、中国での事業展開にあたって考慮すべき労働市場の変化と対応策などについて、さまざまな立場から示唆を得ることができるよう企画されたものである。

北京と広州で精力的に情報収集

視察団に参加したのは、NICCの活動を支援する企業の人事・労務担当者を中心に、あわせて17人。アドバイザーとして、追手門学院大学経営学部非常勤講師のオランゲレル氏(労働法専攻、法学博士)が同行した。9日に在北京法律事務所の専門家から最近の労働法制の改正についてレクチャーを受けた一行は、翌10、11の両日、東芝(中国)有限公司、日本貿易振興機構北京センター、在中国米国商工会議所、中国企業連合会、中国政府(人力資源・社会保障部)を精力的に訪問。(1)直近の中国経済・貿易の変化(2)現地企業における人事・労務管理、労使関係の現状(3)労働法制の変化と日系企業の具体的対応策(4)中国の使用者団体としての立場(5)労働行政責任者としての考え方――などについて説明を受けた後、熱心に質疑応答を行った。また、在中国日本商工会議所を代表して新日本製鐵およびキヤノンの現地法人責任者とも懇談した。

一行は12日に広州に移動し、14日までの間、広州豊田汽車有限公司、広東省企業連合会、広東省総工会、広東省労働仲裁委員会、珠江ビール社を訪問。発展著しい地方都市における状況をつぶさに視察、意見交換を行った。

幅広い角度からの視察内容を評価

参加者の一人、三菱東京UFJ銀行国際企画部の眞田茂春氏は、「一企業の立場では会うことのできない中国の行政、使用者団体、労働組合の責任者の方と直接ディスカッションできる機会を得、それぞれが何を課題としてとらえているのか、今回の労働法制改革の背景に何があるのか、よく理解することができ、大変有意義な視察だった」と話していた。同じく、新日本製鐵人事・労政部の内田秀治氏は、「中国政府の打ち出した労働契約法施行後の様子を、現場の第一線で見ることができ、とても有益だった。中国の労働力は単なるコストセービングの対象である時代から、大きく舵を切り始めたことが理解できた。また、工会についても理解を深め、日系の進出企業も、これをうまく活用して円滑な労使関係を確立すれば、まだまだやっていけることを実感した」と話していた。また、アドバイザーのオランゲレル氏は、「今回の視察先は、政・労・使、中央・地方、外資系・国営企業と、大変バランスの取れた形で設定されており、それぞれ現場の声や悩みを率直に聞けたことがよかった。視察全体を通じて中国政府も企業も、慎重に走り始めているとの印象を受けた」との感想を述べていた。

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