日本経団連タイムス No.2934 (2009年1月15日)

第62回評議員会開く

−御手洗会長、経済危機の脱却へ決意表明



あいさつする麻生首相

日本経団連は12月22日、東京・大手町の経団連会館で第62回評議員会を開催、御手洗冨士夫会長、米倉弘昌評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長、評議員など約480名が出席した。

冒頭、あいさつを行った米倉議長は、この1年、わが国経済が極めて厳しい状況に直面した中、御手洗経団連が矢継ぎ早に政府への要望を打ち出し、政府の対応につながったことを評価した上で、一刻も早く景気回復が図られるよう、引き続き取り組むよう期待を表明した。
また、構造改革や将来の成長につながる政策課題についても、道州制や電子行政をはじめ数々の成果をあげたことを評価した上で、引き続き税・財政・社会保障制度の一体改革、地球環境問題、雇用といった難題に取り組むべきだと述べた。

次に、御手洗会長があいさつに立ち、まず、「日本経済は現在、石油ショック、平成不況を上回る第三の危機にあると指摘した上で、この厳しい環境から脱却し、持続的成長につなげるため、明確なビジョンに基づき、果断に政策を実行することが不可欠である。具体的には、税制抜本改革、財政健全化、持続的な社会保障制度の確立、道州制の導入による地域経済の活性化などに国を挙げて取り組むべきだ」と述べた。
雇用問題については、政労使が一丸となって、雇用の安定を図り、働く場を創造する必要があるとし、社会通念上妥当と認められる理由がない限りは内定取り消しや派遣契約の中途解約を行うべきでなく、労働法制の順守を徹底していきたいと述べた。
その上で、企業は経済のダイナミズムを生む原動力であり、企業が牽引役となり、経済の活力を取り戻すことに全力を挙げるとの決意表明を行った。

続いて、来賓の麻生太郎内閣総理大臣はあいさつの中で「経済界にとって厳しい1年であったが、日本のバブル崩壊を乗り切った経験と世界第2位を誇る経済力を背景として、世界的な不況からの脱出に向け、海外からの期待は大きい。当面は、雇用の安定と企業向けの資金繰り対策を柱とする経済対策に取り組む」と述べた。さらに、環境、エネルギーや再生医療などの戦略分野の推進、アジアの成長力拡大と内需拡大のための取り組みなど中長期的な成長戦略の策定に着手するとの意向を示した。
最後に、世界的な不況からの脱却に向け、経済界の果たす役割に期待を寄せた。

そのほか来賓の二階俊博経済産業大臣からは、雇用の維持確保、企業の資金繰り対策などについて、中川昭一財務大臣からは、平成21年度予算と税制改正、金融危機対応などについて、中曽根弘文外務大臣からは、国際情勢と外交政策について、舛添要一厚生労働大臣からは、雇用対策や年金記録問題などについて、与謝野馨内閣府特命担当大臣(経済財政政策)からは、経済危機への対応について発言があった。

引き続き、白川方明日本銀行総裁が、「世界的な金融危機と日本銀行の政策対応」と題して来賓講演を行った。この中で白川総裁は、国際金融資本市場と世界経済の動向について分析。「昨年夏以降の国際金融資本市場の混乱を受けて、世界経済は次第に減速傾向を強め、特に9月半ばのリーマン・ブラザーズ破綻以降、大きく変化した。最近では、金融と実体経済の負の相乗作用が、米欧のみならず、世界的に広がりを見せ始め、情勢はさらに厳しさを増している」との認識を示した。世界の景気が同時かつ急速に減速した理由については、金融資本市場のグローバル化が景気後退の性格を変えていること、情報通信分野での技術革新の影響、世界的に不安心理や防衛的行動が広がったことを挙げた。
わが国経済の現状と展望については、「わが国の景気は悪化しており、当面厳しさを増す可能性が高いと見られる。先行きも米欧金融危機の帰趨と影響、世界経済やわが国の金融環境の動向次第ではさらに下振れのリスクがある。物価については、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況がさらに下落した場合は、物価上昇率が一段と低下する可能性がある」とした。
続いて、日本銀行の金融政策運営について、国際金融資本市場の動揺が深刻化した2008年9月以降、日本銀行が政策金利の引き下げ、金融市場安定化の措置、企業金融支援といった措置を講じたことについて触れた。
最後に、当面は危機の「消火」を最優先課題として全力を挙げるとともに、日本経済が物価安定の下で持続的成長経路に復することができるよう努力すると発言した。

【総務本部総務担当】
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