日本経団連タイムス No.2934 (2009年1月15日)

「法曹有資格者の活動領域拡大に関する意見交換会」検討結果の取りまとめ公表


日本経団連のほか、法務省、日本弁護士連合会、法科大学院協会、文部科学省が参加した、「法曹有資格者の活動領域拡大に関する意見交換会」の検討結果の取りまとめが12月24日、公表された。

同意見交換会は、2008年9月、保岡興治法務大臣(当時)と日本経団連首脳との懇談会において、保岡大臣から、司法試験合格者拡大により法曹人口が飛躍的に増加している状況の中で、「法務省と日本経団連が連携して、企業における法曹有資格者の活用を積極的に進めるための方策を検討したい」との発言があったことを踏まえて設置されたものである。

意見交換会では、法曹有資格者(司法試験合格者を指し、必ずしも弁護士資格を取得している者に限定されない)の活動領域の拡大について、各組織ごとの取り組み方や、組織同士の連携のあり方について検討した。

意見交換会の場では、企業における法曹有資格者の採用は、ここ数年で急速に増加しているものの(01年62人、08年267人)、まだ全体の人数としては、少数にとどまっていることに関して、まず、あくまでも法律家としての採用・就業を希望する法曹有資格者と、従業員として採用する以上は待遇や人事異動においても通常の新卒採用者と同様に扱う意向をもつ企業との間に、ミスマッチが生じていることが指摘された。これについては、法科大学院協会が中心となって、各法科大学院間の相互の連携を強めながら、法科大学院生への就職支援体制を整備・強化するとともに、企業で就業することの意味を教育の現場で伝えていくこととなっている。

さらに、法曹有資格者が自らのキャリア・知見を活かした就職活動ができるよう、日弁連は、運営している法曹有資格者向けの就職情報ウェブサイト(ひまわり求人求職ナビ、URL=http://www.nichibenren.or.jp/ja/legal_apprentice/himawari_navi/bengoshi_saiyou.html)の利用を法曹有資格者や企業に呼びかけ、法曹有資格者の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進し、法曹有資格者を対象とした企業向け就職説明会の開催・拡大を継続することとなった。

日本経団連としては、各企業に対して、民間企業での法曹有資格者の役割・機能を周知し、その特殊性を考慮した採用活動の検討がなされることを要請することとなった。例えば、法科大学院修了の法曹有資格者の就職活動時期は、企業の通常の新卒採用時期と一致しないため、選択肢が狭められているのではないかという懸念があることから、司法試験受験後(毎年5月ごろ)に就職活動を開始する法科大学院修了生が存在することを会員企業等に周知、柔軟な採用活動が期待されていることを呼びかけることとした。また、入社時期についても、4月入社にこだわらず、司法修習を終えた12月からの入社を認めるなど、ケース・バイ・ケースの対応が期待されていることなどを、周知することとした。

なお、企業における法曹有資格者の活用のあり方・状況、これを阻害している要因およびこれらの問題を解決するための方策については、法務省が中心となり、日本経団連を含む関係機関の間で、今後も継続的に意見交換を行うとともに、関係機関の連携のあり方についても検討を行うこととした。

各企業においては、企業に就職を希望する法曹有資格者が存在することを認識し、その実情に応じた柔軟な対応の検討をお願いしたい。

なお、取りまとめの本文については、法務省のホームページ(URL=http://www.moj.go.jp/PRESS/081222-1.html)を参照のこと。

【経済第二本部経済法制担当】
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