日本経団連タイムス No.2937 (2009年2月5日)

アジアへの輸送ルート整備に協力を

−レヴィチン・ロシア運輸相との懇談会開催



発言するレヴィチン運輸相

日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は1月16日、東京・大手町の経団連会館でロシアのイーゴリ・I・レヴィチン運輸大臣との懇談会を開催し、ロシアの運輸政策ならびにインフラ整備プロジェクトの現状と展望について聴くとともに、日ロ協力の可能性について意見交換を行った。レヴィチン大臣の発言要旨は次のとおり。

■ 2030年までの運輸発展戦略を実行

昨年、「2030年までの運輸発展戦略」および「2030年までの鉄道発展戦略」が採択された。両戦略の実施にあたり総額5000億ドル、うち約4割を極東のインフラ整備に投入する。過去、極東にこれほどの資金が拠出された例はなく、極東・東シベリアの開発に政府がいかに本格的に取り組もうとしているか、ご理解いただけるだろう。

政府としては、天然資源の輸出先の多様化を図るべく、欧州向けに加え、アジア向けの輸出拡大をめざしている。このため、極東・東シベリア開発計画により資源開発を促進することとしているが、その確実な履行のためには、輸送インフラ整備が不可欠である。特に極東では、鉄道を利用して輸送する物資が多いことから、鉄道輸送関連のインフラ整備に重点が置かれている。シベリア鉄道と並行して走るバム鉄道の近代化もその一つであり、東シベリア産の石炭を、国内有数の規模に拡張するワニノ港から積み出す。ワニノ港は、極東における新たなコンテナ輸送基地としての役割も担うことになる。さらに、ヤクーツクまでの鉄道整備により、長年の課題である極北地域への恒常的な輸送手段が確保されることになる。

ソ連崩壊により、ロシアは西部の港を含め、ロジスティクス関連インフラの多くを失った。現在その再生を図っており、シベリア鉄道に沿って整備される各種ロジスティクス関連事業への参画は非常に有望である。日本企業が積極的にロシア企業との協力を推進することを期待している。ロシアは極東と欧州を結ぶ「トランジット大国」としての役割を十分に発揮することができる、信頼できるパートナーである。

■ 自動車の現地生産を支援

自動車産業では、既に外国メーカー10社がロシアに進出を果たしており、現地生産を進める動きはますます強まっている。しかし、欧米メーカーによる合弁事業が本格化し始めたのはまだ数年前のことであり、外資との協力関係が熟す前に、今般の世界的な経済危機の影響を受けてしまった。このため政府は、自動車産業の保護策を打ち出した。

また、国産車の鉄道輸送料金を優遇し、極東の消費者が全国均一価格で購入できるようにした。極東では、自動車工場を誘致すべく、販売網やアフターサービス網の整備に関する支援策も検討している。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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