日本経団連タイムス No.2937 (2009年2月5日)

ブラジル・パラグアイへ自然保護プロジェクト視察ミッション派遣

−植林活動と日本人移住の歴史の一端にも触れる



サンパウロ「経団連の森」での植樹

日本経団連自然保護協議会(大久保尚武会長)では、日本経団連自然保護基金が支援しているプロジェクトの活動状況の視察のため、毎年ミッションを派遣している。今年度は1月14日から21日の日程で大久保会長をはじめ日本企業の関係者など10名が、ブラジルとパラグアイで行われている活動を視察した。

■ ブラジル・サンパウロ「21世紀の森づくり」視察

「21世紀の森づくり」はサンパウロ市とその周辺地域で2008年の日本人ブラジル移民100周年の記念事業として行われている事業である。その目的は、過剰な森林伐採や、サンパウロ市の都市化、人口増加による森林の減少に対し、育苗と植林を中心に、森林の自然再生をめざすことである。現場は、サンパウロ市内のチエテ川流域のエコロジ公園で、NGOのオイスカ・ブラジル総局、日本ブラジル移住者協会などの日系ブラジル人が中心となって推進している。事業では140ヘクタール、10万本の植林を4カ年計画で日伯友情の森として行う計画で、現在の樹種は98種類に及んでいる。またその中で「経団連の森」として3ヘクタールを整備する予定で、今回現地の人々とともに、アカシア、ブラジルの国花であるイッペー、アロエイアなど5種150本を植樹した。植樹後、公園内でパーティーが開かれ、懇親を深めるとともに、日系ブラジル人の移民当初から現在に至る間の大変な苦労の様子を聴くこともできた。

■ パラグアイ・イグアス日本人移住地「イグアス入植50周年に向けた植林活動」視察

ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの3カ国が国境を接するブラジルの町、フォス・ド・イグアスからバスで陸路パラグアイのイグアス市へ向かった。2011年は、イグアスに日本人が入植してちょうど50周年に当たり、その記念すべき年に向け、イグアス日本人会が06年から5カ年計画で、植林と環境教育を実施している。この植林の目的は、近年の気候変動などによる干ばつで農作物の収量が低下していることから、持続可能な農業とそれに不可欠な水源林を保全することである。07年には日本経団連自然保護基金の支援を得て育苗センターが完成し、現在3万本の苗が育てられている。これまでに20万本の植林を行っている。今回、われわれも団員1人当たり2本の植樹を行ってきた。昼食会では、イグアス日本人会婦人部の人々の手料理を食べながら、懇談会を行った。入植以来の日系人の苦労や最近の農業の状況などを聴き、日系社会がパラグアイで先導的な役割を果たしていることが印象的であった。

今回は、植林活動の視察という視点とは別に、もう一つブラジル、パラグアイの2カ国それぞれでの日本人移住の歴史の一端に触れることもできた。移住当時、大変な苦労をした日系人が、いまやその国にしっかり溶け込んで、植林活動を通して、その国の環境を率先して守っていく姿を見て、植林した木が大地にしっかりと根を生やし、大きく成長していく姿に重ね合わせることができるのではないかと感じた。

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