日本経団連タイムス No.2938 (2009年2月12日)

国際会計基準のわが国への適用について

−金融庁審議会が報告書案/経済界の意見取りまとめへ


国境を越えた投資の拡大や企業の事業展開のグローバル化を背景に、金融証券市場のインフラである会計基準の国際的な統一化の動きが勢いを増している。
わが国でも2月4日に金融庁企業会計審議会から、国際会計基準(IFRS)の採用に向けた報告書案が公表された。

1.各国の動向

IFRSは、2005年からEU域内の統一基準として適用が義務付けられたのを皮切りに、カナダ、豪州、インド、中国、韓国などいまや100カ国を超える国が採用を決めている。世界最大の市場を抱える米国でも、昨年11月に09年度からの大企業への任意適用と、14年からの段階的な強制適用を明記したロードマップ案が公表されている。

日本経団連では、昨年10月に提言「会計基準の国際的な統一化へのわが国の対応」を公表し、わが国でも、IFRSを適用するためのロードマップ案づくりを急ぐべきと提案した。

2.わが国での取り扱い案

今回の金融庁の報告書案では、IFRSは当面、連結財務諸表に対してのみ適用することとし、10年3月期の年度財務諸表から任意で適用を認めることが提案されている。任意適用の対象企業は、上場企業のうちEU域内または米国で上場ないし公募による資金調達をしている企業や一定規模以上の企業である。

また、将来の強制適用については、現時点で決定するのではなく、IFRS適用に向けた諸課題の達成状況や、米国の動向を踏まえつつ、12年を目途に判断することが提案されている。さらに、強制適用の判断から少なくとも3年間の準備期間を確保した上で移行することとされていることから逆算すると、最短で15年が強制適用の目安となる。

3.IFRS採用に向けた課題

IFRSを採用する際に解決すべき課題としては、(1)IFRSの内容(2)IFRSを適用する場合の言語(3)IFRSの設定におけるデュー・プロセスの確保(4)IFRSに対する実務の対応、教育・訓練(5)IFRSの設定やガバナンスへのわが国の関与の強化(6)XBRLのIFRSへの対応――の6点が掲げられている。投資家、作成者、監査人、当局、教育関係者、市場開設者といった市場関係者が一丸となって、取り組みを急がなければならない。

◇◇◇

報告書案は、4月初旬までの予定で広く関係者の意見照会を求めることとされている。円滑にIFRSを適用していくために、連結財務諸表へのIFRSの適用を機に個別財務諸表の開示を抜本的に簡素化すること、また、巨額の費用発生が適用の足かせとならないような配慮、適用に向けたより明確なスケジューリングなど、日本経団連としても意見を取りまとめていく予定である。

【経済第二本部税制・会計担当】
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