日本経団連タイムス No.2938 (2009年2月12日)

今後の宇宙開発利用について議論

−政府の宇宙基本計画の方向性など/宇宙開発利用推進委員会


日本経団連の宇宙開発利用推進委員会(谷口一郎委員長)は4日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、内閣官房宇宙開発戦略本部事務局の丸山剛司事務局長代理から、政府が5月に取りまとめる予定の宇宙基本計画の方向性等について説明を聴くとともに、今後の宇宙開発利用のあり方について議論した。
丸山氏の説明の概要は以下のとおり。

1.宇宙基本計画の基本的な方向性について

(1)宇宙を活用した地上の豊かさ・安心・安全の実現

これまでの宇宙開発利用政策を改め、今後は政府が一体となって行政と民間の利用ニーズに継続して対応する必要がある。そのため、新たなサービスを創出するとともに、衛星データをユーザーが使いやすくするための取り組みを進めていく。

(2)宇宙を活用した安全保障の強化

安全保障分野における民生と防衛のデュアルユース化にも留意しつつ、憲法の平和主義の理念に則って検討していく。また、米国との包括的な協力関係を基礎としつつ、国益を反映した国際安全保障環境形成に向けた外交努力を払っていく。

(3)宇宙外交の推進

アジア・太平洋地域に対する外交において、ODA等の適切な活用も含め、宇宙分野の知見を積極的に活用する。それらの活動を通じ、国際的なリーダーシップを発揮していく。

(4)21世紀の戦略的産業の育成

国際市場において競争力を有する宇宙産業を確立するため、宇宙開発利用に関する中長期的な計画を示すとともに、宇宙機器のシリーズ化・政府首脳によるトップセールスの実施等により、国際市場の開拓を進めていく。

(5)人類の夢・次世代への投資

ロボット技術等のわが国が得意とする技術を活かし、月・惑星探査プロジェクトや宇宙太陽光発電等のプロジェクトの検討を進めるとともに、将来の有人宇宙活動のあり方についても検討する。

2.2009年度における宇宙開発利用に関する施策について

(1)「災害監視衛星」の目的を拡大した陸域や海域を観測する衛星としての開発の着実な推進

「災害監視衛星」は、平常時のニーズにも対応した衛星として開発を進めるとともに、幅広いユーザーの開拓を行い、データ処理・検索システム等について検討する。

(2)次期気象衛星の着実な推進

観測期間に空白が生じないよう、「ひまわり」の後継機開発を進めるべく、予算措置がなされる予定である。

(3)GXロケットの今後の進め方について

GXロケット(中型ロケット)については、戦略的な日米関係構築等の観点から推進する必要があるが、技術的課題のクリアや、安全保障ミッションと米国市場における政府需要についての調査が必要である。それらの結果を踏まえ、2010年度概算要求までに、本格的開発着手に関する判断を行う。

(4)宇宙基本法を踏まえた新たな取り組みの推進

防衛分野については、「防衛計画の大綱」の見直しを見据え、防衛省を中心に引き続き検討を進めることが必要である。また、外交分野については、官民の連携を十分に図りつつ、ODA等の適切な活用も含め、諸外国に貢献していくことが必要である。

◇◇◇

宇宙開発戦略本部事務局との懇談終了後、これまで宇宙開発利用推進委員会企画部会(栗原昇部会長)と同宇宙利用部会(山下守部会長)で検討してきた提言案について審議した。その結果、いくつかの指摘はあったものの、委員の間で大筋の合意が得られたことから、最終的な取り扱いについて、委員長一任とすることが決まった。
提言案は、17日に開催される日本経団連理事会の承認を経て公表し、関係先に建議する予定である。

【産業第二本部宇宙担当】
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