日本経団連タイムス No.2938 (2009年2月12日)

産学連携による高度情報通信人材育成の成果で意見交換

−筑波大学、九州大学と/情報通信委員会高度情報通信人材育成部会


日本経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館で、情報通信委員会高度情報通信人材育成部会(重木昭信部会長)を開催した。会合では、日本経団連が2006年4月に産学連携による新たな高度情報通信人材育成の重要協力拠点として指定した筑波大学と九州大学が、文部科学省の「先導的ITスペシャリスト育成プロジェクト」の支援を受けて実施してきた産学連携による高度情報通信人材育成コースの成果について、筑波大学の田中二郎システム情報工学研究科長と九州大学の安浦寛人副学長から、説明を聴くとともに意見交換を行った。

冒頭、重木部会長が、両校では07年4月に、高度な実践的IT教育を行う新コース(大学院修士課程)が開講、協力企業の多大な支援により順調に進み、今年3月に産業界のニーズに合った人材が2年間の修士課程を終え、社会へ巣立つ予定であることを紹介した。

次に、筑波大学の取り組みについて田中氏が説明。これまでの大学院教育の問題点は、教員の研究テーマが優先され、産業界のニーズとずれが生じ、実践的な教育が不十分であったことと指摘した上で、同コースでは講義より実習を優先し、基礎力向上のため、単位を30から50に増やすなど、教育を重視していると強調した。

また、企業の実システムを題材とした実践的プロジェクト型科目と企業から派遣された教授による体系的な指導により、同コースの学生は、支援企業の採用担当から「極めて実践的な学習をしており、修士課程1年次終了時点で入社2年後の会社員と同等以上である」と高く評価され、7割以上が支援企業に内定していると述べた。さらに、同コースを11年度に新専攻とすることをめざす計画が示された。

引き続き、九州大学の取り組みについて、安浦氏が説明。新コースの特色は、社会にイノベーションを起こすリーダーの育成であると述べた上で、企業からの派遣教授の指導によるプロジェクト型実践科目を2年間に3回実施するとともに、講義内容・カリキュラムを産学連携で検討する合同合宿に学生を参加させるなど、学生の自主性を促す仕組みを実施し、学生企画による企業訪問や講演会を開催するなど、学生の自律性が発揮できる教育となったと述べた。

また、同コースの継続のためには、早急な制度化が必要と指摘、09年度に正規の修士課程教育コースとして新設するとの説明があった。

意見交換では、今後、企業が欲する人材として、IT技術だけでなく、経営やユーザーの立場での提案依頼書の作成能力など、2つ以上の専門知識を持ち合わせる人材が必要になるとし、同コースのさらなる発展を求める意見があった。

意見交換終了後、支援企業を中心とした取り組みを継続することを目的に、昨年12月に構成された高度情報通信人材育成支援センター設立準備委員会から、両大学で実証された有効な教育モデルを広く他の大学へ展開するため、この産学連携による高度情報通信人材育成支援を発展・継続していく組織として特定非営利活動法人を09年前半に設立するとの方針と計画が示された。

会合の最後に重木部会長は、今後の日本経団連の高度情報通信人材育成支援の実務は同センターを中心に継続し、これまで培った産学連携の経験を活かし、新たな高度情報通信人材育成の発展につなげていきたいと述べた。

なお、同部会終了後、特定非営利活動法人高度情報通信人材育成支援センターの設立総会が開催された。

【産業第二本部情報通信担当】
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