日本経団連タイムス No.2939 (2009年2月19日)

21世紀政策研究所が第60回シンポジウム

−日本経済活性化のための外資活用とその規制のあり方探る


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は6日、東京・大手町の経団連会館で第60回シンポジウム「日本経済活性化のための外資活用とその規制のあり方」を開催した。同研究所では、昨年11月に中間報告書「健全なるグローバリゼーション進展のために積極的な外資の活用を!」を発表し、外資の活用とその規制のあり方について広く議論を提起している。

宮原理事長の開会あいさつの後、安田隆二研究主幹(一橋大学大学院教授)が中間報告の概要を報告した。続いて、欧州における対内直接投資をめぐる最新の議論をラルス・ヘンドリック・ルーラー独ESMT学長が紹介した。パネル討議では、杉山美邦読売新聞東京本社調査研究本部総務、阿達雅志ポール・ワイス・リフキンド・ギャリソン法律事務所顧問が加わり、経済危機の影響を受けての保護主義の台頭、ファンド・キャピタリズム、外資規制といった論点について活発な議論が行われた。当日は、日本経団連の会員企業・団体などから約80人が参加し、議論に熱心に耳を傾けた。

冒頭あいさつで宮原理事長は、「わが国が外資を積極的に活用するためにも、外資規制のしっかりとした安全弁が必要である」と述べた。安田研究主幹は、成熟化した日本経済を高付加価値化させていくには内外の活発な資本交流が不可欠であること、外資系企業から見ると、法規制は対日投資の主たる阻害要因ではなく、日本市場の魅力向上が重要であることを指摘。対日投資促進に際しては、長期的な企業価値の向上に寄与する製造業、サービス業といった産業資本からの投資を優遇すべきとの見解を示した。加えて、日本の外資規制は列挙主義・事前届出制度・刑事罰制度を基本としているが、予見可能性が高い一方で、規制の抜け穴を突かれると有効な規制措置が取りにくく、安全保障や公の秩序の点から問題ある投資を事後規制できる制度の導入を検討すべきとして報告を締めくくった。

ドイツより来日したルーラー学長は、昨年末に発表した政策提案の要旨を紹介し、経済危機を契機に欧州各国で保護主義が台頭する傾向が見られるが、世界経済のガバナンスを高める仕組みを考えるべきであり、保護主義の行き過ぎに警戒する必要があるとの考えを示した。

後半のパネル討議で、阿達氏は、経済危機により米国の金融システムが機能しなくなっていることを指摘し、米国ではファンドに対する情報開示義務が強化されるであろうとの見方を示した。また、昨年11月のエクソン・フロリオ条項(米国における国家安全保障にかかわる規制)の改正のポイントを説明した。杉山氏は、資源のない日本は戦後の自由貿易体制の下で成長してきた歴史があり、保護主義的な動きには警戒が必要なこと、外に向かって内外無差別の自由な国であることをアピールして外資の知恵を活用することの重要性を訴えた。一方で、現在の外資規制の枠組みは、その実効性に問題があり、見直しが必要であるとの考えを述べた。

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