日本経団連タイムス No.2940 (2009年2月26日)

改正労基法成立の経緯と改正のポイントを聴く

−労働法規委員会


日本経団連の労働法規委員会(三浦惺委員長)は12日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、厚生労働省労働基準局長の金子順一氏から「改正労働基準法の成立経緯とその概要」について、説明を聴いた。

同法改正の主な内容は、(1)使用者が1カ月について60時間を超えて労働させた場合、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の50%以上の割増賃金率を適用する(中小企業については当分の間、適用を猶予)(2)前述(1)の割増賃金の支払いに代えて代替休暇(有給)の付与を可能とする(3)法定労働時間を超える労働に係る労使協定(いわゆる36協定)の、厚生労働大臣の定めることのできる基準(労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準、労働省告示第154号)に、割増賃金率に関する事項を追加する(4)年5日を上限に時間単位の年次有給休暇の付与を可能とする――である。

金子氏はまず、労働政策審議会答申(2007年2月2日)に基づく法案要綱から、政府与党によって自己管理型労働制および企画業務型裁量労働制に関する記述の削除と、月80時間を超える労働時間に50%の割増率の適用を義務化することの追加がなされた上で、同年3月13日の第166回通常国会に提出されたことや、その後の国会審議で、(1)50%以上の割増賃金率を適用する基準を原法案の「月80時間超」から「月60時間超」に変更(2)施行期日を原法案の「交付の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」から「平成22年4月1日」に変更――の2点の修正が加えられたことなど、改正の経緯について説明した。

続いて、それぞれの改正事項について説明。主なポイントとして、(1)法定割増率50%以上が適用される1カ月60時間のカウントには、法定休日の労働時間を含まない(2)月60時間超50%割増の適用が猶予される中小企業は事業場単位ではなく、企業単位で判断する(3)限度基準告示の改正により盛り込まれる予定の努力義務は、「1カ月45時間を超える時間外労働をさせる場合には、特別条項付の36協定で、当該45時間超の時間外労働に対する割増賃金率を定めること」「その割増賃金率は法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること」「月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること」――の3点を挙げた。

会場からは、「1カ月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率引き上げの努力義務について、指導の対象となるある程度の目安があるのか」「時間単位の年休について、取得できる時間の単位を定めることができるのか(例えば2時間単位とする等)」などの質問が出され、それぞれ、「割増賃金率引き上げの努力義務について、目安をつくることはない。事例を集め、参考として情報提供しようと考えている」「時間単位年休の取得できる時間の単位は、今後の労働政策審議会での検討事項となるが、各企業が労使協定によって決められるようにしたいと考えている」との回答があった。

そのほか、会合では「育児・介護休業法改正への対応等」や、「労災保険料率の改定」等についての報告が行われた。

【労政第二本部労働基準担当】
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