日本経団連タイムス No.2941 (2009年3月5日)

中南米地域駐箚大使との懇談会開催


日本経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館で中南米地域駐箚大使との懇談会を開催した。

■ 佐藤悟・外務省中南米局長

懇談会では、佐々木幹夫副会長・中南米地域委員長のあいさつに続き、外務省の佐藤悟・中南米局長が、わが国の対中南米政策と課題について説明を行った。佐藤局長は、「日系人の存在もあり伝統的に親日国が多い中南米はわが国にとって重要なパートナーであり、国連改革や気候変動問題など日本の外交施策を中南米と連携して追求したい」と述べた。また、国際的な経済危機の影響が中南米にも波及していることを指摘し、「保護主義に走らないよう働きかけるとともに4月のG20金融サミットに向け、中南米支援を考えていきたい。中南米は、中・長期的には5億人の成長市場として、また生産拠点、資源・エネルギーや食糧等の供給源として重要である。経済危機による鉱山権益価格の低下や円高などは日本企業にとってチャンスでもあり、政府としても政策金融の弾力的運用、経済連携協定や投資協定の締結促進、ビジネス環境整備の協議など、さまざまなかたちで日本企業を支援していく」とした。環境、資源、エネルギーの分野での協力については、ODAの有効活用と官民連携強化の重要性を強調した。また、9月に東京で開催されるアジア・中南米協力フォーラム(FEALAC)の外相会合に触れ、「アジアと中南米の経済を含む交流促進のため、リーダーシップを果たしていきたい」と決意を述べた。

■ 島内憲・駐ブラジル大使

島内憲・駐ブラジル大使は冒頭、昨年の「日伯交流年」が大成功を収めたことを報告、経済界の協力に対して謝意を示した。次に最近のブラジル経済について、「リーマンショック以降、急ブレーキがかかり、株価と通貨レアルが下落している。信用収縮により自動車や家電など耐久消費財の売上減少はその他のセクターにも波及しているが、政府が減税など経済対策を次々と打ち出している。一部は効果を上げており、経済は来年後半から緩やかに回復するだろう」との見方を示した。
またブラジル経済の特長としてバランスの取れた経済構造、内需主導の経済成長、低い政治リスクを挙げ、中・長期的な見通しは明るいとした。さらに、両国が協力して日本方式のデジタルテレビ放送を近隣諸国に広めるとともにリオデジャネイロ‐サンパウロ間高速鉄道プロジェクトにオールジャパンとして取り組みたいと述べた。

■ 小野正昭・駐メキシコ大使

小野正昭・駐メキシコ大使は、2009年のGDP成長率はゼロからマイナス1〜2%になるが、年内から底入れし徐々に回復するとの見方を示した。また日墨EPA発効により、投資は3倍、貿易は2倍に拡大したことを報告した。カルデロン政権の成果として、民間のサービス部門への参入に道を開くメキシコ石油公社(PEMEX)改革を挙げ、今後は治安改善や競争力強化が改革の重点項目となると指摘、米国への経済依存が徐々に弱まる中、NAFTA見直しを掲げるオバマ新政権との関係を注視したいと述べた。
わが国との関係では環境分野での協力の可能性について言及した。また、09年から10年に実施する「日本メキシコ交流400周年」事業への協力を要請した。

■ 林渉・駐チリ大使

林渉・駐チリ大使は、今年12月に予定されている大統領選挙に触れ、与野党とも経済政策の違いはほとんどなく、新政権も引き続き市場重視の基本路線を踏襲するだろうとの見方を示した。
経済では、「銅価格の大幅な下落と、通貨ペソ安などに伴い輸出と歳入が減少し、財政経常収支は赤字の見通しであるが、政府が1月に発表した景気刺激策の効果を注視したい」と述べた。一方、07年9月に発効した日本とのEPAの成果として貿易面では日本の対チリ輸出が96%、同輸入が6%増加したこと、投資面では進行中の大規模鉱山投資を挙げた。その他、環境や天文学、デジタルテレビ分野での協力に言及した。

■ 寺澤辰麿・駐コロンビア大使

寺澤辰麿・駐コロンビア大使は、はじめに「日コロンビア賢人会」の活動への協力に対して謝意を表明。続いて世界経済危機がコロンビア経済に与える影響について述べた。「同国は過去100年で3度のマイナス成長を経験したが、いずれも他国に比べ低下の幅は小さく翌年の回復が著しい。また、産業構造では製造業の占める割合が19.3%と低く、外国の消費財需要減退の影響を受けにくいことに加えて、輸出入の対GDP比も40%と低く、輸出入のGDPに与える影響は相対的に小さい。さらに対外債務はGDPの約2.5倍と中南米の中では平均的な水準にあり、十分な外貨準備を持ち、対ドル為替相場や株価下落の影響は比較的小さく、政策金利が9.5%と政策発動の余地が大きいことなどから、政府が発表した09年のGDP成長率3%の見込みは達成可能である」とした。

■ 目賀田周一郎・駐ペルー大使

目賀田周一郎・駐ペルー大使は、「昨年は投資協定締結とEPAの前向きな検討など両国関係に大きな進展があった。これらは民間セクターの強力な支援によるものである」と発言するとともに、「ペルーは非鉄金属を中心とした世界有数の資源国であり、食糧供給国としての将来性も高い。また、世界有数のFTAネットワークのハブたらんという明確な政策を持っている」と述べた。また日本との関係が進展している背景にガルシア大統領の対日重視政策があることを指摘し、「ペルーは投資環境の改善を経済危機対策の一環として位置付け、鉱物資源開発や加工、インフラ整備や環境分野に経済出動を行い、民間投資を歓迎している。円高の今こそ対ペルー投資のチャンスである」との見方を示した。

■ 斎藤伸一・駐ニカラグア大使

斎藤伸一・駐ニカラグア大使は、中米情勢とニカラグア情勢について説明した。中米6カ国の人口は約4000万人で関東地方と同規模、GDPはフィリピンと同程度にもかかわらず、進出日系企業は約60社にとどまっていると現状を紹介した。ニカラグアについては、「急進左派のオルテガ政権はベネズエラとの関係を強め、米国やEU諸国との関係は悪化している。経済面では、米国からの送金と輸出依存が大きく、今年度はいずれも減少が予想されており、経済全体に悪影響を及ぼすのは必至である」と述べた。日本との関係では長年地道に続けてきた経済協力が高く評価されており、投資環境の整備を前提とする労働集約型産業への投資の可能性について言及した。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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