日本経団連タイムス No.2943 (2009年3月19日)

COの中期削減目標、わが国の考え方聴く

−鈴木・経産省産業技術環境局長から/環境安全委員会


日本経団連は5日、都内で環境安全委員会(坂根正弘委員長、鮫島章男共同委員長)を開催した。当日は、わが国のCOの中期削減目標に関する考え方について鈴木正徳経済産業省産業技術環境局長から説明を聴いた上で意見交換を行った。鈴木局長の発言は以下のとおり。

現在、政府の中期目標検討委員会において、わが国の中期削減目標の策定に関する議論が進捗している。京都議定書には米国、中国が参加しておらず、世界全体のCO排出の3分の1しかカバーしていない。また、当初、日本は1990年比3%削減、EUは同15%削減という線で議論されていたが、交渉の過程でEUが8%削減となった反面、わが国は6%削減を受け入れざるを得なかった。ポスト京都議定書における中期目標の検討では、「ここまではできるが、これ以上やると問題が生じる」ということを国民にしっかり提示したい。なお、委員会の目的は中期削減目標の選択肢を提示することであり、最終的には政治的に決定される。総理は、1月のダボス会議の場で、6月までに中期削減目標を発表する旨言及しているが、目標達成のための国民負担をしっかり理解した上で決断していただきたいと考えている。

委員会での検討は、複数の研究機関が提示したモデルがベースとなっているが、いまのところモデル間の隔たりは大きい。例えば、実現可能な最先端技術を最大限導入した場合、2020年にエネルギー起源COを05年比14%削減することが可能であるとするエネルギー経済研究所のモデルと、温室効果ガスを同21%削減できるとする国立環境研究所のモデルを比較した場合、前者は風力による電力供給を500万キロワットとしているのに対し、後者は1000万キロワットと想定している。そこで、2月中に、主要な業界団体からヒアリングを行った上で、現在、モデル間のギャップを埋めるための精査を行っているところである。

海外に目を向けると、先日、米国のオバマ大統領が予算教書の中で20年までに05年比14%の排出削減をめざす旨言及している。もっとも、米国がポスト京都議定書の枠組みを批准するためには、議会において、共和党からも賛成票を得ることに加え、石炭産出州選出の民主党議員が反対に回らないようにする必要があり、ハードルは決して低くない。他方で、オバマ政権としては、京都議定書のように議会を通らないような事態は避けたい。したがって、議会を通らないような国際的なコミットは絶対できない。

これから3月、4月にかけて国内外でさまざまな議論が行われるが、わが国としては、「ここまではできる」という点を明確にし、もしもそれより高い目標を掲げることになれば、「これだけの経済負担を政府として行う」という覚悟の下に掲げるということで議論をさせていただきたい。他方、産業界には、引き続き世界最高水準のエネルギー効率をめざす決意をしていただきたい。

【産業第三本部環境担当】
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