日本経団連タイムス No.2944 (2009年3月26日)

わが国の総合的な食料供給力強化に向け提言

−食料生産基盤強化など、安定供給体制構築求める


世界的な人口増加などにより、世界の食料需給は不安定なまま推移することが懸念されている。また、国内では耕作放棄地の増加や農業従事者の高齢化が止まらず、国内の食料供給基盤は崩壊の危機に瀕している。
一方で、近年、食料や農業の問題に関する国民の関心が高まり、新規就農希望者が増加している。海外においては、わが国農産物が高い評価を受けている。
そこで、日本経団連では17日、このような状況をわが国農業の活性化と競争力強化の絶好の機会ととらえ、国民に食料を安定的に供給していくための「わが国の総合的な食料供給力強化に向けた提言」を取りまとめ、その実現を政府・与党ほか関係各方面に働きかけることとした。同提言の概要は以下のとおり。

■ 食料生産基盤の強化

提言の第1の柱は、「食料生産基盤の強化」である。とりわけ、農地制度改革によって、(1)優良農地の確保と有効利用の徹底(2)多様な担い手による農地の有効利用の促進(3)担い手の経営面積の大規模化と農地集約への支援――を進めることが重要である。
政府が2月24日に閣議決定し国会に提出した農地法改正法案では、これらの日本経団連の考え方が盛り込まれている。そこで提言では、農地法改正法案の早期成立・施行を求めるとともに、その適正運用として、改正法の下で農業生産法人の要件緩和の対象を幅広く設定することやリース方式による農業参入の審査基準の明確化を求めている。

■ 国民・市場のニーズへの対応

第2の柱は、「国民・市場のニーズへの対応」である。高度化・多様化する国民・市場のニーズに対応していくことが農業と関連産業の競争力強化、活性化を図る上で不可欠だからである。既に経済界では、契約栽培、生産技術の提供、販路開拓・輸出促進、経営支援、国産農産物の積極的活用等、農業界との連携・協力に向けた取り組みが進んでいる。提言では、経済界としてこうした取り組みを一層推進する姿勢を明らかにしている。その上で、その環境整備として、政府に対し、(1)農商工連携制度の拡充(2)高品質な農産物・加工品の輸出促進(3)付加価値の高い農産物・加工品の開発(4)農業分野における研究開発のさらなる推進――を求めている。

■ 国際連携・協力の推進

第3の柱は、海外から安定的に輸入を確保するための「国際連携・協力の推進」である。具体的には、(1)国内の農業構造改革の進展とWTO・EPA交渉の一層の推進(2)WTO・EPAにおける輸出規律の強化と東アジア連携の強化(3)海外での食料生産のための基盤整備(4)世界の食料生産の促進に貢献する国際協力――の推進を指摘している。
これらの政策を総合的・一体的に推進することが、わが国の総合的な食料供給力を確保するために強く求められている。

なお、提言全文は日本経団連ホームページ(URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/023/index.html)を参照のこと。

【産業第一本部産業基盤担当】
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